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 昇降口は新クラスを確認する生徒でごった返していた。仲のいい奴と同じクラスになれれば、それが一番いい。逆に嫌いな奴と同じクラスだったら、それはもう目も当てられない。とはいえ、この学園に通う以上、同じ職場で働くことは避けられないので、クラスがどうとかいう以前の問題だ。  国立藤ヶ丘学園は、見た目は普通の学校と変わらないが、実は通っている学生は能力者という、特殊な人間である。  日本では数十年前から、度々能力者と呼ばれる不思議な力を持った子供が生まれてくるようになった。初めは奇跡だと揶揄されていたその力も、数が増えてくるにつれて、次第に別の意味を伴ってくるようになった。まるで人間ではない力に、非能力者たちは、恐れをなした。次第に偏見や差別が助長されるようになり、そんな矢先に事件は起きた。  能力者が非能力者を大量殺害した事件だ。さらに差別の意識は広まり、国はどうするか考えた結果、能力者の子供を一斉に管理するために、学校を作った。そして、その力を国のために使うように、と能力者で結成された組織・黎明軍として働くようになったのだ。だからこそ、この学園で真面目に頑張っている者は、割と少なかったりする。  予定調和の未来に、どうやって希望を抱けというのだ。彼らの主張はそんなところで、この藤ヶ丘学園は、男子校ということも相まって、かなり問題児が多かった。  一学年ニ百人ほどだ。じっくりと森塚は自分の名前を探していく。せめて、和泉……多紀とか日浦でもいいから一緒のクラスだといいんだけど……。仲の良かった友人や中等部時代からの付き合いである彼らの顔を思い浮かべる。じーっと見ていると、とあるクラスでようやく自分の名前を発見することができた。……のだが。 「嘘……だろ?」  思わず、といったように声がポツリとこぼれた。呆然とする森塚の傍ら、歓声やら悲鳴やらが、遠くに聞こえる。自分だけ取り残されたような感覚に陥り、立ち尽くすしかない。何かの間違いか?と何度も何度も確認するけれど、結果は変わらない。  ───何故、俺が二組に?  優秀な生徒を集める一組に対し、それには劣るものの二組だって、それなりに優等生が集まる。一組は未来の幹部候補が多く集められているという噂だ。仲のいい高野なんかは中等部から一組に属しており、クラス替えがない分、結束力は高い。その他大勢の生徒にとって、雲の上のような存在だ。  二組は、学業の優秀さにプラスして能力の扱いに長けている者が選ばれると聞いたことがある。お世辞にも自分が学業で優秀な成績を収めているとは、到底思えない。悲しいことに。だからこそ、誰かの策略を疑ってしまう。  それに、あまり目立つことはしたくないのが本音だ。チラリとクラスメイトを確認したところ、いるわいるわ、有名な奴らがうじゃうじゃと。否が応でも浮くに違いない。憂鬱な気分になりながら、教室に向かった。

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