9 / 65

8

 新聞部といえば、学園きっての変人が集まる部活だ。校則違反や脱走騒ぎ、暴行事件に真偽の問わない噂に目敏く飛びつき、やりたい放題調べては次の騒ぎへと飛びついてくハイエナのような集団だ。  風紀委員会としても違反すれすれの情報収集を行う新聞部も取り締まり対象ではあったのだが、彼らの持つ情報収集能力や校内に散らばるツテは魅力的すぎた。結局、多少のおイタは見逃すとして、代わりに風紀から要請があればすぐに情報を提供するという約束を、秘密裏に取り交わしたのだった。  当時、まだ中等部二年で風紀委員としてはヒヨッコ中のヒヨッコだった森塚は、この密約の要となった。右も左も分からないまま新聞部の城、もとい部室へ行かされた時のことは、今でも覚えている。まごうことなき変人の集団を間近で見て、随分精神をすり減らされた。 とはいえ、その日々は現在まで続き、今も両者の意見をすり合わせる橋渡しとして、胃を痛める毎日である。 「今はさー、月一発行の定期新聞作ってんだよね。もうじきアンケート配ると思うから、協力よろ」 「ん、了解。──これか?『あなたはどこ出身?』……?」 「そう。ここって、割と関西出身の奴も多いじゃん。新一年生対象にね」  ふと、友人の高野の顔が思い浮かぶ。言葉遣いに若干の関西の方の方言が混ざっているのだ。なんとなく普段の会話に織り交ぜて幼少期のことを聞いたこともあるが、あまり歯切れは良くなかったと記憶している。  高野とはそれなりに長い付き合いになるけれど、そういえば、地元のことはあまり聞いたことがない気がする。 「親と上手くいってなかったり、地元から離れたいっていう人は、あえて遠い学園に通ってるんだってさ」  渡辺の言葉に相槌を打ちながら、なるほどと頷いた。能力者の学校は、関東と関西の二つに分かれる。そこからさらに男子と女子に分かれるため、実質四つあるということだ。  関東にある藤ヶ丘学園と、関西にある桜ヶ丘学園。原則としてなるべく近い方の学園に通うようにはなっているが、そこはのっぴきならない事情で少し変わることもあるらしい。森塚は学園から地元がそんなに離れておらず、大人しく藤ヶ丘学園を選んだ。そのため、頻繁に里帰りをすることもない。 「まぁ、あんまり羽目外しすぎないようにしろよ」  ふんふん、と鼻歌を歌う渡辺を横目に、森塚は課題と戦うのだった。

ともだちにシェアしよう!