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昼休みになり、和泉と高野と昼食をとるため、食堂に来ていた。二人は中等部からの数少ない友人である。和泉は明るい金髪に大きな丸い目をしており、年齢の割には幼い見た目をしている。高野は一組に所属しており、優秀な生徒だ。透き通るような青い瞳と髪色が、とても目を引くのだそう。これは渡辺からの情報である。
クラスは違っても、昼食はこの三人で食べるのが日課になっている。日替わり定食を受け取り、三人で座れる席を探す。運良く空いていたカウンター席に連なって座る。
「はぁ、お腹すいた〜!食べよ、食べよ〜!」
和泉の元気な声に合わせ、いただきますと手を合わせる。今日のメインは生姜焼きだ。タレがしっかりからめてあって美味しい。
「ていうか、さぁ……。彰人くん、二組になっちゃったよね?なんでー?」
「彰人くんのクラス遊びに行けないー!」と和泉は嘆いた。
和泉と日野原は中等部の時から犬猿の仲になっている。小学校が同じだと言っていたが、今はお互い視界に入れようものなら、吹雪が舞う。何度もその場面に遭遇してきたので、経験から二人だけにしてはいけないと学んだ。
「俺だって嫌だよ。普通に春名とか邦枝あたりと同じクラスになりたかったよ」
もぐもぐと肉を食べながら森塚も不満をこぼす。何故今さら、と思わないでもない。優秀な奴なんて、大体決まっているのに。
「嫌だなー……ごふ‼︎」
「おや?」
「おやおや?」
「「邦枝とは、どっちの方かな?」」
お茶を飲んでいた森塚にテンションの高い生徒二人が思い切り飛びかかる。衝撃で吹き込んでしまった。
「今日はどっちがどっち?」
「パーカーを着てる方が伊月だよ!」
「セーターを着てる方が朝日だよ!」
高野の問いかけに、邦枝兄弟と呼ばれた生徒はポーズを決めながら答える。お調子者の邦枝兄弟とは、この二人のことだ。
「いきなり飛びかかんなよ……」
「ふふん、油断大敵だぜ、森塚よ!」
「そうとも!俺らの前で背中を向けるたぁ、いい度胸だぜ!」
「お前ら、昨日はなんのドラマ見たんだよ……」
双子の邦枝兄弟は仲が良い。兄の朝日は発明部で夜な夜な怪しい実験や発明を繰り返しており、ついには生徒会、風紀ともに要注意生徒のブラックリスト入りを果たした。弟の伊月はまだマシな方だが、こちらも悪戯好きで有名だ。
「にしても、なんで日野原は森にちょっかいばかり出すんだろう」
ポツリと呟かれた高野の言葉に、森と和泉が首をかしげる。確かに妙に突っかかってくるのだ。嫌いなら放っておいてくれればいいのに。
「そういえば日野原、昔は今みたいじゃなかったよ。割と誰とでも仲良くしてる感じ」
「はぁー、あいつが?ぜーったい嘘だよね、伊月」
「そーだよねぇ、朝日」
愛想のいい日野原を想像して、背筋が震えた。ありえない。頭に浮かぶ過去の日野原(想像)を頭の中から消し去る。
「いつからだろー……あんな感じになったの。でも確か、小学校の後半ぐらいからかな。いきなり冷たくなったから最初はどうしたんだろうってみんな心配してたけど、ずーっとあの態度だから次第に周りの友達もいなくなっちゃった」
ふぅん……と相づちを打つ。どうしても愛想のいい日野原なんて想像できなかった。
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