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昼休み、事件の詳細を知っている風紀のメンバーが揃いも揃って見舞いに来た。
日浦には「お前は筋金入りの馬鹿だな」と言われ、山倉には「いっぺん死ななきゃ分かんねぇのか、このアホ」と言われ。癒しなのは、今日の変装が弟系タイプの結城委員長と、泣いて「森塚先輩が生きていてよかっだですっ」と言ってくれた志木くらいだ。
「そこに座れ」
「もう座ってます……」
というか、まだ寝ています。とは口が裂けても言える空気ではない。氷点下の気温のようだ。取り調べを待つ罪人とはこんな気持ちなのかと、ドキドキしすぎて気持ち悪い。
山倉は腕を組みながら、「まぁ茶でも飲めよ」と湯のみを差し出した。
……間違っても受け取れないです。冷や汗が止まらない。
「お前、仕事をすっぽかしただけでなく、あまつさえ単独で学園外まで追いかけた、と。何をしたか分かってんのか?」
思い切り睨みつける山倉に、肩が跳ねた。サァ、と血の気がどんどん引いていく。結城が「まぁまぁ……、森塚もそのことはよく分かっていると思うよ」と宥めても、山倉の態度は変わらない。
もちろん、自分のしたことが悪いのは、分かっている。だけど、気をぬくと、泣いてしまう。痛みもだが、他にも怪我をしたところと、心が。
「……今回の件で、何人か勘付いた奴がいるかもしれない。お前、今後目立つの禁止な」
山倉が釘を刺した。そう、森塚の事情は、実は複雑なのである。一般の生徒とは一線を画した生活を送ってきているのだ。
グッと押し黙ったままの森塚の頭を、ポンっと軽く叩く。
「腕が治るまで、十分に体を休めろ。……よく諦めなかった。高野も沖も、……生徒会の奴も、お前に感謝している。お前は、凄いよ」
涙が出そうになった。必死に押し殺して、なんとか前を向く。あぁ、みんな優しい。自分がしでかしたことは、とんでもないことだ。それを分かっていて、でも、やっぱり見捨てない。だからこそ、どれだけ厳しく指導されても、嫌いになれないのだ。
「あ……ありがとう、ございます……」
小声だが、礼をなんとか言うことができた。ポロポロ落ちる涙を、なんとか拭う。そんな森塚の肩を、日浦が励ますように規則正しく叩いた。
「ごめんなね。山倉、森塚が大怪我して帰ってきたから、心配で気が立っててしょうがないんだ」
こっそりと結城が耳打ちする。
「おいこら結城ぃ……何言ってやがる」
「そのヤクザ顔やめときなよね。志木が怯えてる」
確かに今日の山倉は普段より気が立っている気がする。そのことを指摘されて悔しいのか、いつもより山倉は結城を乱暴に扱う。最も、こんいうことには慣れっこなので、結城は軽くあしらう。
しばらく話してから、授業があるということで、彼らは保健室を後にした。
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