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 どれぐらい眠っていたのか、時計を見てみると、もう放課後だった。渡辺が来たのが五時間目の真っ最中だったから、二時間はゆうに寝ていたことになる。  夜寝られるかな、と考えていると、コンコンとノック音が来室者が来たことを知らせる。  どうぞ、と入るよう促すと、かなり大勢が入ってきた。 「森塚ー!なんだ、元気そうじゃん。よかったー!」 「ほんとだぜ!手術したって聞いた時はもう、どうしたもんかと!」  邦枝兄弟がいると、一気に騒がしくなる。苦笑しながら「よっ」と手を挙げる。 「にしても、ほんと肝が冷えたわ……。生きててよかった。これ、見舞い品のゲーム」 「多紀、ありがと……。ただ明日には退院するから、これはいいかな」 「あらま。まぁこっちのゲームおすすめだから、貸すからやっといてよ」 「なら遠慮なく」  多紀は「それじゃ、森塚も元気そうだし、帰って寝るわ」とふわぁ、と欠伸をする。ゲームのやりすぎらしい。多紀は元々長居する予定はなかったようだ。 「俺たちもそろそろ帰るな」 「積もる話もあるみたいだし?」  邦枝兄弟の二人も、思う存分見舞い品の果物を食べて満足したのか、手を振りながら保健室を後にする。  残ったのは、高野と和泉、沖と日野原だ。  みんなより後ろに一歩引いていた高野を、ほらっと和泉が前に引っ張る。高野の表情は強張っており、顔色が悪い。 「冬馬くん、すっごく落ち込んでたから、元気づけてあげて」  和泉がこっそりと森塚に耳打ちする。口を噤んでいた高野だったが、意を決し話し始める。 「森塚、ごめん。俺のせいで大怪我させてしまった」  ガバッと勢いよく頭を下げる高野に、慌てたのは森塚の方だ。 「怪我したのは自分の責任だし、高野は守るべき対象だから、風紀として当たり前のことをしたまでだ。頭を上げてくれよ」 「でも……、俺の家族のせいなんだ。あいつらも言っていた、俺の両親が……。俺、本当はここにいちゃいけなかったんだ。罰が当たったんだ」  高野は泣きそうになりながら、そして懺悔するように言葉を絞り出す。 「ごめん……、ごめんなさい、俺がいなければ……!」 「違うよ、高野のせいなんて、思ってない。それに、怪我だってすぐに治るし!点滴してもらったら痛くもなんともないし、むしろ体動かせんくてストレス溜まってるぐらいよ!」  元気なのをアピールするために、力こぶを作る。ズキンと痛んだ気がしたが、気のせいで通すしかない。 「気にすんなよ、高野。これからも変わらないでいてほしい」 「ごめん、ごめんな……。本当は、言えないことばかりなんだ」  重い空気になってしまった。全員黙ったままだと、中々話し始めるには酷だ。そんな雰囲気を壊すように、和泉が「はい!これで辛気臭い話は終わり!」と手を叩いた。 「僕だってね、彰人くんには呆れてんの。もう怪我しないって、絶対に無茶しないって約束して」  和泉の迫力がすごい。元々目が丸くて大きいと思っていたが、その姿を知っていると細められた瞳が迫力を増している。 「和泉の言う通りだよ。俺も、本当は言えないことたくさんあるんだ。でも森塚は自分が傷つくのも顧みずに助けに来てくれた。……本当にうれしかったんだよ」  それまで黙っていた沖の援護射撃により、場の雰囲気はなんとか持ち直すことができた。それじゃ、と沖は高野と和泉に病室を出るよう促した。 「僕たち、これで席を外すね。日野原が話したいことあるって」 「え、え?なに?」 「いいから、いいから……。ごめん、話合わせて」  和泉は戸惑っていたが、高野は沖の思惑を察した。行こう、と和泉の手を引く。 「また学校でね」  あっという間に去っていった友人らに、森塚は手を振った。 (さて、と……。どうしよう、この状況……)  ずっと黙ったままの日野原と二人きりになってしまった。気まずさが限界突破しそう。チラリと横目で見ると、めちゃくちゃ目つきが悪い。  パイプ椅子を引っ張ってきて座る。なにを話すのか様子を窺っていたが、日野原は黙って腕を組んでいる。

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