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第二章

 青空が眩しく、空はどこまでも高く続いていると思えるほど、青く澄み渡っている。絶好のスポーツ日和だ。  そんな中で、藤ヶ丘学園球技大会は、開催の運びとなった。球技大会は数少ない行事のうちの一つで、新生活に慣れた五月あたりに毎年開催されている。予選の一日目。準決勝と決勝、それからエキシビジョンマッチが行われる二日目に分かれており、運動好きの生徒はこぞって楽しみにしていた。  校舎内の見回りを担当している森塚は、すれ違う一年生に羽目を外しすぎないよう声かけしながら、人気の少ない廊下を進む。毎年、警備が手薄の学園内で悪さをする輩が後を絶たないのだ。  二学年の教室がある階を見回り、生徒がいないことを確認していく。五組のクラスまで確認したところで、和泉と高野が歩いているのが視界に入った。 「彰人くーん!見回り終わった?」 「ん、そろそろ切り上げるところ」 「じゃあ一緒に行こー!お昼一緒に食べれそう?」 「んー、見回りの時間的に、やっぱ微妙っぽい」  委員会の仕事は交代制だ。森塚が出るドッジボールの試合は、午前中に二試合と午後に一試合行われる。合間に仕事となると、昼休みなどしか余っていなかった。 「えー、それじゃあ、僕がバスケ出る時は応援に来てね!絶対決勝行くし!」 「わかったって。高野は?何出るっけ?」 「俺はバレー。背高いってだけで入れられるんだよなー」  談笑しながらだと、すぐに校庭についた。クラスごとに整列しているので、森塚は二組の列に並ぶ。偶然前が沖で、軽く雑談を交わしているうちに、開会式の時間になった。 「────怪我に気をつけ、正々堂々と勝負するように」  前に出て開会宣言をしているのは、藤ヶ丘学園高等部生徒会会長・鬼無瀬正徳《きなせ まさのり》会長だ。代々能力者を輩出する一族に生まれたエリート中のエリートで、彼は特に武力において優秀である。低く落ち着いた声は、聞いているだけで思わず背筋を正してしまう。迫力のある人なのだ。  開会式も無事に終わり、第一試合がある生徒は、すぐに会場まで急いでいる。時間厳守なため、遅刻でもしようものなら問答無用で不戦敗にされかねない。  森塚はドッジボールに出るのだが、そちらはまだ時間があるので、お茶を買っておこうと自販機に向かっていた。校庭から一番近いのが体育館脇にあるので、そこまで歩かないといけない。  五百mlのお茶を取り出し、喉が渇いているので、半分ほど一気に飲み干した。  ふぅー、と一息つく。周りは慌ただしく急いでいるが、こうしてお茶を飲んでいると、平和だと勘違いしてしまいそうだ。  二年生になってから、息つく暇もないぐらい忙しかった。授業も難しいし、求められるレベルも格段に上がっているという実感がある。それに加えた、生徒を拉致しようとした、あの事件。  春先に起こった事件により、森塚は右腕を大怪我した。かなり深部まで抉られたと思ったが、現代の医療技術は本当にすごい。少しリハビリをしただけで、以前と同じように動くようになった。感覚もしっかり戻っている。  まだ安静は必要となっているが、今日の球技大会はなるべく安静にするなら良いと保健医の許可をもらっている。

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