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高野と沖、それから日野原を拉致した組織については、学園側も調査中とのこと。関わってしまったからには、自分には詳細を知る権利があると主張したものの、のらりくらりと躱されてしまった。
正直なところ、学園の上層部はあまり信用できない。なんというか……腹の読めない連中がうようよといるのだ。
学園から去ってしまった渡辺を、学園側は最初からいなかったものとして扱っていることも一因である。驚いたことに、渡辺は荷物を全部学園に置いていっていた。同室者として片付けを申し出たが、学園側は勝手に彼の荷物を全て持っていってしまった。
もし万が一、渡辺が戻ってくる時の居場所を守ろうと思っていた森塚は、実はかなりショックを受けていた。
ふぅ、とまた息をついた。事件について考えていると、どうしても暗い気持ちになってしまう。
「森塚」
「わっ……!びっくりした」
「あはは、考え事してた?」
声をかけてきたのは沖だった。人懐っこい笑みに絆された気分になる。
「ねー、森塚って、見回りと試合に出る以外に時間ある?」
「時間?んー、合間合間ならあると思うけど」
「お、マジー。だったらバスケの応援きてよ、俺たち優勝狙ってるし」
二組は沖や日野原など運動神経に自信がある奴を、バスケチームに集中させていた。もちろん優勝候補として名を連ねている。
「もちろん行くよ」
「やりぃ、森塚が応援に来てくれたら張り切っちゃうからね」
「え、俺の応援にそんな効果が?いや、逆効果じゃ……」
一ヶ月が経ってようやくクラスでもちらほらと喋る人ができたぐらいだ。授業で当てられて答えられないと当然ひそひそ話の対象だし、日中は気が抜けない。
「いや〜、日野原には効果抜群だと思うよ」
ふんわり笑う沖に、疑問符を浮かべた。
そろそろバスケの第一試合が始まるそうで、沖は走っていってしまった。
森塚もドッジボールの試合が行われる第2グラウンドへ向かう。さて、対戦相手はどこだろうか、と掲示板に貼ってある対戦表を確認した瞬間、息が止まった。
なんと山倉先輩率いる三年一組だ。いや、無理だ。山倉は、あの細腕から想像もつかないほど、豪速球を投げる。あれに当たったら、軽く意識は飛ぶことが想像できる。
(腹痛くなってきた……)
そんなことはつゆ知らず、クラスメイトでチームリーダーの榎本は、かなり張り切っていた。
「森塚!お前、山倉先輩のボール、絶対にキャッチしてくれよな!」
「は?いや、無理だから。俺、腕怪我してるし」
「そこをなんとか!あの人さえどうにかすれば、勝てると思うんだよなー」
「いやいや、無理だって……」
「大丈夫!一回ぶつかって、威力さえ殺してくれれば!」
(清々しいほど、人のことを囮か何かとしか思ってないな)
ジトっと目を細める。森塚の肩をがっつり掴み、榎本は熱弁している。若干引くほどの熱量に、「ははは……」と乾いた笑いしか出なかった。そんなやり取りをしている中、早々に山倉のお出ましだ。
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