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ラブ、大盛で #8

「う…っ」 牧の唇が太い肉茎を咥え込むと、鳴海は小さな唸り声を漏らす。 ぬるりとした感触に包まれて、正直なその雄はみるみるうちに硬さを増していく。 奉仕の経験はないものの、牧は以前自分が鳴海にしてもらった時のことを思い出しながら、唾液をたっぷり絡めてゆっくりと愛撫をする。 根元から舌を這わせていき、先端に滲み出た蜜をちゅうっと吸い上げると、その反り返る茎がビクビクと脈打った。 「ま…き、…さん……」 気持ちいいです、と吐息混じりの声が聞こえて。牧は愉悦に浸った表情で上目で見上げると、その熱っぽい視線とぶつかった。 鳴海は息を荒くしながら、牧のその厭らしい舌使いに魅入るように陶酔していて。 牧は、胸の奥がズクンと疼く。 ――ずっと、この顔が見たかった。 もっと感じて、もっと興奮して。もっと、悦んでもらいたい。 牧はサイドの髪を耳にかき上げ、再び鳴海の性器を口の中に含めると、夢中になって頭を上下に動かした。 そんな淫らに揺れ動く牧の姿に釘付けになっていた鳴海は、ふとあることに気がつき、眉根を寄せる。 「牧さん…。今日、その服で飲み会行ったの?」 ……服? 言われて、牧は自分の格好を一瞥し確認するが。 黒の長袖カットソーに厚手のバーガンディーカラーのパーカーを羽織り、ボトムも普通のインディゴのジーンズだ。特に変わったところは見当たらない。 「え…、もしかしてダサかった? インビジの服なんだけど」 どれも牧の勤める『invisible(インビジブル) garden(ガーデン)』の商品で、先日まで店頭のマネキンに着せていた組み合わせでもある。 ディスプレイを担当した自分でも気に入っていたので、購入して仕事中でも着用していたのだが。 「そういうわけではなくて。ちょっと、胸元が…開きすぎかな、と……」 鳴海が途切れ途切れに言い、若干その表情を曇らせた。 確かに牧がインナーとして着ていたトップスはゆったりとした作りになっているので、前屈みになると口の広い襟がはだけて、鎖骨から下のあたりまで丸見えになっていた。 「あー、これかなり緩めのボートネックだからな。……別に男だし、見えたって困らないだろ」 「俺が、困ります。酔っ払った無防備な牧さんの素肌を見て、良からぬ感情を抱く人がいたらどうするんですか」 「どうするも、何も……。つか、そんな奴いねえって」 無用な心配をする鳴海に、いいから続きしよ、と牧は催促する。 手で鳴海の茎を寄せ、もう一度しゃぶりつこうと屈んだ瞬間。はらりと胸元の布地が下へ垂れ、その隙間から小さな乳首がちらりと覗く。 それだけで、牧の手に包まれたものがググっと大きく膨らんで。 鳴海が、溜め息に似た大きな息を吐いた。 「……少なくともここに一人、まさに欲情して勃起しまくっている男がいるんですが…」 鳴海が、ばつが悪そうな顔で目を逸らすので、牧もつられて視線を泳がせる。 「お、俺…。胸ぺったんこだけど」 「牧さんは、自分がどれだけえっちな体をしているか、わかってないだけだよ」 こんな平らな胸でも、鳴海は性的興奮を覚えてくれているらしい。 牧はそれがなんだか、嬉しくて。 「じ、じゃあ…。触って……みる?」 胸をドキドキさせながら、シャツの裾をするすると捲ってみせる。 引き締まった腹筋と細い腰が、徐々に姿を現していく。 下の方は何度かさらけ出してはいたが、上は露出したことはなかったので、もしがっかりされたらどうしようと少し逡巡していると。 「うわ…っ!」 ぐるんと、体が反転した。 組み敷いていたはずの鳴海にいつの間にか押し倒されていて、牧の体の上に鳴海が覆いかぶさる形となる。 形勢逆転。視界には白い天井と、鳴海の顔だけが映る。 いつもの優しげな顔とは違う、雄の顔をした鳴海がそこにいて、牧ははっと息を呑んだ。 「ちょっ…、鳴海……?」 当惑していると、服の下から鳴海の手が滑り込んできて、胸元をまさぐられる。 指先がそこに潜む突起を捉えると、牧は体をビクンと大きく震わせた。 「あっ、…んン……!」 先端を親指の腹で軽く押し潰され、自然と上擦った声が零れる。 生まれて初めて人に触られたそこは、想像以上に敏感で。 「や…、あああ、あ……ッ」 くりくりと指先でつまむように弄られるのを、牧は喉を反らしながら悶え喘ぐ。 イイ声で鳴く牧の反応を見て、鳴海は嬉しそうに口角を上げた。 「牧さん、可愛い……。乳首弄られるの、好きなんだ?」 「し、知らな……」 そんな経験なんて一度もないので、好きか嫌いかもわからない。 「今日、は……。俺が、鳴海……触ろ…と、思っ……のにッ」 「ごめん。俺も、触りたくなっちゃった」 「……ずる、い…。んンっ」 ぎゅっと目を瞑って、ひたすら波打つ刺激に耐えていると。 鳴海に着ていたTシャツの裾を脇の下まで捲り上げられて、牧の胸元が露になる。 海やプールに行くときは半裸になろうが何も感じないのに、恋人に直視されるということがこんなにも羞恥に(さいな)まれるとは思わなかった。 淡い桃の色をした乳首の先は、ぷっくりと立ち上がりを見せていて、無自覚に相手に「もっと」と誘う。 そして鳴海の顔が目の前から消えると同時に、牧の胸の尖りに柔らかい感触が襲う。 「ひぁ、うう……ッ」 ぬるんとした舌が、先端を舐め上げる。 突き出した舌先でぐりぐりとかき回すように責められ、堪えきれず牧は腰をくねらせた。 「な……る、み…ッ」 触っていいとは言ったけど、舐めていいなんて言ってない。 そう目で訴えると、鳴海は理解をしたのか、それともしてないのか。 「すみません。……こっちも、触りますね」 「あ、ああああ……っ!」 空いている方の乳首も指でつままれて、ついには両方同時に快感に狂わされてしまう。 そうじゃ、ない。触ればいいってことじゃなくて…。 言いたいのに、牧は言葉にならない声しか出すことができない。 「ぁ…、ふぅ…ンンっ」 ちゅっと音を立てて吸われ、びりびりと電流が神経を伝う。 まだ前戯しかしてないのに、頭が変になりそうだ。 もしセックスなんてしたら、どうなってしまうんだろう。 期待と不安で、ごちゃまぜになる。 「鳴海……。俺、したい…」 「……牧、さん?」 小さな声で名前を呼ぶと、鳴海が顔を上げる。 とろんと、とろけた瞳で。牧はただ頭の中に浮かんだ言葉を放つ。 「鳴海と、セックスしたい」 「――…!」 鳴海の体が、一瞬強張ったのがわかった。 微かに、その指先が震えてる。 「牧さん……。本当に、いいの…?」 「言っただろ。鳴海に、抱かれたいって。……最後までしていい、ってことも…」 そこまで言うと、牧は上体を起こし、着ていた服を一枚ずつ床に脱ぎ捨てる。 すっかり股間が窮屈になっていたジーンズと下着をずるんと下ろすと、鳴海と同じように上を向いたペニスが勢いよく飛び出した。 一糸纏わぬ姿となった牧を見て、思わず鳴海は生唾をごくんと飲み込む。 それは、鳴海が頭の中で何度も想像したものよりも、遥かに綺麗だった。 牧はベッドの上に四つん這いになってみせると、鳴海のいる方へと自身のお尻を突き出し、顔を後ろに向ける。 窄まりに手を当てて、それを指でぐいと広げてみせ。 それから、掠れた声で強請(ねだ)った。 「俺のココに…。鳴海のちんこ、入れて――…?」

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