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ラブ、大盛で #10
「ひぁ…っ、…ふぅ、んんっ……」
固く閉ざされた蕾は、一本の指によって無理矢理こじ開けられていく。
生まれて初めて受ける感覚に、牧は鼻にかかった声を漏らしながら、全身を強張らせる。
ローションに塗 れた指先がずぷりと侵入し、厭らしい下の口はきゅうっと締めつけながら中指の第一関節まで飲み込む。
鳴海の指はピアニストのようにすらりと長く、筋の張った手の甲も男らしい色気があって。
そんな手が自分の恥ずかしいところを責め立てていると考えるだけで、牧はぞくりと興奮を覚えた。
「牧さん…、もっと力抜かないと、入らないよ……?」
「んなこと……言われても…っ」
大きく左右に開いた股の間から、鳴海を見上げる。
ベッドの上に仰向けに寝そべる牧の足元には、両膝を折り曲げて跪坐 する鳴海がいた。
されるがままに身を委ねるこの状況は、まるで料理でもされているみたいだ。まな板の上の何とやら、というやつである。
思ったほど痛みはないが、何だか変な感じがして落ち着かない。
牧がぎこちない呼吸を繰り返していると、鳴海はローションの蓋を開けて、空いている左手の方へ液を垂らす。
そして濡らした手を牧の性器へと伸ばすと、そのまま優しく握って包み込み。
「やっ…、ああ、あああ……っ!」
ぬるぬるした液体ごと、やんわりと扱 かれる。
突然強い刺激に襲われ、今日まだそこを一度も触れられていなかったことも差し響いて、深い快感から逃れられなくなる。
くたりと力を少しなくしていた雄は単純なもので、簡単に元気を取り戻していった。
「ふ、あっ…、やぁ……んぅッ」
手淫のリズムに合わせて、後ろに差し込まれた指が奥へ入り込んでいく。
手のひらが尻に当たり、鳴海の指を根元まで咥え込んだのがわかった。
奥まで到達すると、鳴海は指を一度引き抜き。そこにローションを足して、また中へと挿入する。
指関節を少しずつ出し入れされて、ぬちゃぬちゃと卑猥な音を立てながら、牧の中が濡らされていく。
ぐりぐり、入口を広げるように指を回され、かき乱され。
その間にも茎を擦る手は容赦なく動き続けるので、牧は当然のように快楽の渦へと溺れていった。
「牧さん、どう? ……力、抜けた?」
「んん…っ、くぅ…、あ…ぁ」
余計な力は抜けたはいいが、代わりにびりびりとした痺れに似た感覚に身悶える。
硬直していた体はすっかり融解しきって、熱いフライパンの上に落とされたバターのように溶けていく。
「指、増やすけど。もし辛かったら、言ってくださいね……」
解 す指が二本に変わるが、貪欲な牧の後ろはすんなりと受け入れてしまう。
中で指が淫らに蠢き、引っ掻くように肉襞 を擦ると、牧は大きく腰をくねらせて悦んだ。
「んあああっ! そこ…! 気持ち、い……ッ!」
牧が反応した箇所をぐりぐり押してやると、艶っぽい声が汗ばんだシーツに零れ落ちる。
陰茎の先端からは蜜が溢れ、ローションと混ざり、秘部は更にぐしょぐしょに濡れた。
反り返った性器を伝って孔 まで垂れた雫は、指の出し入れと共に中へとねじ込まれていき。
その度にくちゅくちゅと厭らしい水音が響きわたり、耳まで犯される。
先ほど鳴海に見つけられたイイところを執拗に責められ、牧は堪らず嬌声を上げた。
「あ、ああ……ン、それ…っ、すげ…イイ……ッ」
「牧さん、ココ弄られるの、今日が初めてなんだよね…? えっちの才能、ありすぎでしょ」
もっとして、とおねだりする牧の姿が、あまりに扇情的すぎて。
鳴海は、未だかつてないほどの強い情欲をかき立てられてしまう。
「――っ、やばい。もう無理。牧さん、エロすぎ」
ついに我慢の限界を超えたのか、吐く息を荒くして。
「多分、優しくする余裕…ないかもしれない……ごめん」
先に謝っておいて、性急にゴムのパッケージを開封して、装着する。
自身のものにも潤滑液をたっぷりと塗りたくり。
鳴海はその頂 を、牧の窄まりに充てがった。
ひくひくと収縮していたそこは、一瞬つっかえたかのように阻んだが。
滑りの良い触感も手伝って、すぐにぬるんと侵入を許した。
「ひ……あ、あああ、ああっ…」
細い指とは比べ物にならないほどの、質量を持った肉棒が体内へ入り込んでくる。
太くて長い、熱いモノが、粘膜を擦りながら慎重に進む。
「牧、さ…ん……。狭すぎ……っ」
鳴海の切っ先が、牧の内側を抉 っていき。
やがて、最奥に到達する。
結合部のあたりに相手の陰毛が接触して、体と体が完全に密着したのがわかった。
――入った。
たった三文字のその事実が、物凄く特別なことのように感じさせてくれる。
鳴海が興奮してくれているという証を体に直接刻まれて、もう気持ち悪がられてるなんて不安はない。
しかし、パズルのピースのようにぴたりと隙間なく埋まったところで、それきり鳴海は動かなくなってしまった。
「なる…、み?」
心配になった牧が様子を伺ってみると、なぜか鳴海は両手で自分の顔を覆っていて。
……まさか、この期に及んで恥ずかしがっているのか?
え? 入れる方、なのに?
どっちかっていうと、恥ずかしい格好してんのはこっちなんだけど……。
生まれたてみたいな裸の格好で、ポーズだって頭の脇に手を置いて、足もM字に開脚させられていて。もはや、赤ちゃん同然だ。
そんなことを考えながら、牧が若干戸惑っていると。
「…………すみません。牧さんの中に入れたことが、嬉しくて。……感動、してました」
――すでにイキそうなくらい、気持ちいいです。
鳴海が、かろうじて聞き取れるほどの小さな声で言う。
ようやく覆っていた手を外すが。
それでもやっぱりまだ顔を隠したいのか、手の甲で口元を拭うような仕草をしていて。
熱を帯びた瞳はとろけていて、強い快感に必死に耐えるように眉を寄せていた。
そんな少し困った様子の鳴海を見て、牧もつられて照れてしまう。
いつも鳴海は優しくて、格好良くて、王子様みたいだけど。
こういうまっすぐで等身大の姿も、なんだか愛おしくて……。
「やっぱり俺……。鳴海が、好きだなぁ」
牧が、眩しそうに目を細めて笑う。
「――…っ」
しかし、それがトリガーとなったのか。
ついに鳴海の腰が動き出し――…。
「や、あああ…ッ、な…、なる……み…っ?」
まだ動かないと思って油断していたところを突き上げられ。
反射的に、牧は足の爪先に力が入る。
「あ、んっ、んんん……ッ」
自然と、口から艶っぽい声が零れ落ち。
その狭いところは、甘い快楽を与えられながら。
少しずつ、確実に、犯されていく。
寄せては引いていく波のように。
鳴海の熱く滾 ったものが、牧の中で律動を始めていった。
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