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ラブ、大盛で #11

「んっ、あ、ああん……ッ」 鳴海の腰のリズムに合わせるように、自然と濡れた声が出る。 奥を突かれる度に、触れたところが熱くなって溶けてしまいそうだ。 「牧、さ…ん」 はっ、はっ…。 鳴海の、獣のような呼吸が耳に届く。 最初は少し遠慮がちな動きであったはずなのに。 今では荒々しい腰使いとともに、その抽挿は躊躇なく激しさを増していく。 「な…るっ……、な…っ、みぃ……!」 体を揺さぶられ、まともに名前を呼ぶことすらできない。 ――入れただけでイキそうだったんじゃ、ないのかよ…!? 今さっき聞いたばかりの言葉とは裏腹にその絶倫ぶりを発揮する鳴海の精力を目の当たりにして、牧は「話が違う!」と頭の中で一人叫んだ。 「いっ…、んん、っあああぁ…!」 セックスがこんなに気持ちいいなんて、聞いてない。 今までの自分の経験は、ただのままごとでしかなかったと気づかされる。 けれど、それはショックでも何でもなく。 むしろ初めて溺れる相手が鳴海で良かったと、初恋に似た感情さえ抱きつつあった。 「牧、さん……」 鳴海が体を傾けて、繋がったまま、牧に口づけを落とす。 吸い上げるように唇を()んだ後、僅かに開いた隙間から舌を潜り込ませて来る。 牧のものと絡み合って、唾液のぶつかる音が漏れた。 「牧さん、好き…です」 途中、鳴海が息継ぎをする度に愛を囁く。 呼吸をするのと同じように、それは当たり前のように、何度も何度も繰り返される。 「好き。好きです。好き。好き…」 今まで言えなかった分、不安にさせていた分をそれぞれ補うかのように。 過剰なくらいの愛の告白をキスとともに降らされ、牧は触れられた箇所の感度が上がってしまう。 「んんっ、ふ…ぅ…ううン…ッ」 俺も、と答えたいのに。 すぐに口を塞がれてしまうので、言葉にならない声しか出ない。 その代わりに相手の首に腕を回し、足で腰を挟み込んで閉じ込めるようにして、ぎゅっと抱きついてやる。 「……っ、ん」 ついでに後ろもキュッと締めてしまったらしく。 鳴海の色っぽい声が、鼻から抜ける。 ずっと自分ばかりが乱れているようで心配だったが、こうして鳴海の感じている姿を見るとそれだけで嬉しくなる。 「鳴海…ぃ…。…俺も、好き……っ」 隙を見て、ようやく自分も気持ちを伝えることができた。 するとその直後、牧の中で鳴海が更に大きく膨らんで。 「えっ…、ひぁ、ああ……んっ!」 鳴海が体を起こし、再び腰を前後に動かすと、猛々(たけだけ)しいピストン運動を繰り出す。 鳴海の形に広がった(あな)からは、ぐちゅぐちゅと厭らしい水音が漏れていく。 先ほど探し当てられた牧の弱いところを、執拗に責められ。 脳髄まで痺れるような強烈な快感が、牧を襲った。 「あっ、あああ、ああああ…っ!」 背中を弧のようにしならせ、腰を浮かせる。 すでにおかしくなるくらい気持ちがいいというのに、強欲な体は「もっと」と、より強い刺激を求め始め。 「んン、あっ…、んぅ……!」 牧は鳴海の雄を後ろで咥え込みながら、自身の中心へと手を伸ばす。 そして淫猥な蜜を零すその屹立を握ると、本能のままに上下に(しご)き始めた。 ペニスと前立腺、両方同時に受ける刺激はあまりに官能的で。 牧は恍惚として、その甘い欲望を夢中になって追いかけた。 「ん、ああっ、な…鳴海ぃ…! 気持ち、い……ッ!」 「牧さん……。ヤッてる最中に、自分のちんこ弄るとか…。どんだけ、えっちなの」 「だって、我慢、できな……んんっ」 「……俺も、すごく気持ちいいよ。牧さんの中でいっぱい感じてるの、わかる…?」 「ん、んっ…」 返事をする代わりに、牧は頭をガクガクと縦に振る。 薄暗い部屋の中で、二人の荒い吐息の音が響く。 牧の隘路(あいろ)を、大きくストロークをかきながら鳴海の熱い肉塊が出たり入ったりを繰り返す。 「な、鳴海…ッ! 俺、もう…イク…っ!イッちゃ……!」 「牧さ…ん、俺…も…、そろそろ…っ」 牧の足を抱え、鳴海は獰猛な獣のように交尾に(ふけ)る。 パン、パン、とお互いの肉がぶつかり合う音が、余計に興奮させて。 「まき…さん……! 牧、さん……っ!」 「なる…、鳴海、ぃ……! あああ、んああああっ……!」 一際(ひときわ)強く、牧の最奥に鳴海の(くさび)をぐっと打ちつけると。 堪らず、牧の先端からびゅるびゅると白濁の液が飛び散った。 足の指先をぎゅうっと丸めて、鳴海の少し汗ばんだ肌へとしがみつく。 鳴海も牧の中へ熱い精を吐き出し、その肉茎はビクビクと小さく跳ねるように痙攣する。 はあはあと胸を大きく上下させ、お互いマラソンをした後みたいに呼吸を乱す。 牧はぼんやりと、橙のランプの光で照らされた天井を見上げる。 まだ、鳴海のものは牧から抜かれず、名残惜しそうにその存在を残していた。 時間が経つにつれて、どこかにぶっ飛んでしまっていた理性が少しずつ帰ってきて。 じわじわと頭の中に「セックスをした」という実感が湧いてくる。 ――そうか。俺たち、セックスしたんだ。 改めて、脳裏にはっきりしたためると。 牧は途端に気恥ずかしいような、こそばゆいような気持ちでいっぱいになる。 初めてなのに、すごく気持ち良くて、あり得ないくらい感じてしまった。 鳴海に淫乱だと思われたら、どうしよう。 恐る恐る、鳴海の顔を覗いてみると。 「…………なる、み…?」 鳴海の双眸から、つうっと一筋の涙が流れ落ちていた。 茫然自失としたその表情からは、理由を推し量ることもできない。 「ど、どうした、鳴海…? どっか痛いのか……?」 もし痛めたのが局部だったら、完全に自分のせいなんだが。 牧が心配そうに様子を伺っていると、はっと我に返った鳴海が首を横に振った。 「……すみません。違うんです」 慌てて鳴海がゴシゴシと涙を拭うと、今度はその頬を朱色に染めていき。 「その…。牧さんとえっちできたのが、嬉しすぎて……」 ――感極まって、泣いてしまいました。 鳴海の意外な告白を聞いた牧は、一瞬ぽかんと口を開け。 それから、頬を綻ばせて笑った。 「馬鹿だなぁ、鳴海。そんなんでいちいち泣いてたら、精液より先に、涙のが枯れんじゃねえの?」 それはつまり。 これから何度でも、このような行為が当たり前に行われることを揶揄しているようなもので。 自覚なく「またシたい」と宣言する愛しい恋人の顔を見つめ、鳴海は幸せそうに微笑んだ。 「牧さん」 「んー?」 「もう少しだけ……このままでいてもいいですか?」 このまま、というのはこの場合「体を繋げたまま」に置き換えるのが正解だ。 牧はうーんと唸る素振りを見せてから、それから照れくさそうな顔で、小さく口を尖らせて。 「いいけど……。その代わり、ひとつ条件がある」 「条件? 何ですか?」 「もう一回だけ。『好き』って、言って」 さっきあれだけ言われておきながら、欲張りな耳はまだ足りないのだという。 しかしそんな可愛い我儘を、鳴海はからかうことなく、真剣な顔で聞いてくれて。 「牧さん。好きです。愛しています」 低くて柔らかい声に包まれながら、ぎゅっとその腕に抱きしめられる。 「…………愛してるまで言えとは、言ってない」 ぶつぶつ文句を言いつつも、鳴海の背中へと腕を回す。 牧はそれきり黙ると、そっと瞼を閉じた。 火照った肌が合わさって、やがて体温は微熱へと変わっていく。 じんわりと温かいのは。 体だけではないのかもしれない――…。

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