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プロローグ3

 最下層の人種として扱われるΩだ。αの方からの番の申し出なんて、断る方がおかしいほどだ。  目の前に座ったαは誰が見ても間違いなくイケメンだ。均整の取れた顔に少し長めの黒髪。意志の強そうな眉と厚い唇。笑えば誰もが虜になるだろうなと、つい見惚れるほどだ。  このα、徳重慎也に出会ったのはわずか3日前。  内定をもらった会社に書類を貰いに行った帰り。会社の入口の自動ドアで向き合った瞬間。息を飲み、心臓がバクンッと跳ねるほどの衝撃を受けた。  周りに声をかけられるまで向き合って見つめ合っていた。会社の入口であちらは連れもいて、僕の後ろには同じように書類を渡された新入社員が並んでいたから、それほどの時間は経ってなかっただろうけど、僕には長く感じた。  『運命の番』というαとΩだけの特別な絆がるとは聞いたことがある。出会った瞬間に恋に落ち、他の誰にも心は向かなくなるという。恋人がいても、結婚していても、出会ってしまえば離れることはできなくなるほど魅かれ合ってしまうという。本当かどうかなんて分からない。  広い世界で数少ないαとΩが唯一の相手と出会うチャンスなんて皆無だ。  だけど、出会ってしまった。  見ず知らずの相手。初対面。男同士。そんなこと関係なかった。  目が合った瞬間に、『この人だ』と悟った。  それは相手も同じだった。  腕を掴まれて、会社に引き戻されて「名前は?」と聞かれても声が出なかった。彼のすぐ横にいた男が訝しげに僕を見てどうしたのかと尋ねているが、胸から赤い革張りの名刺入れを取り出すと「必ず迎えに行く」と言って僕に握らせて、男に促されて僕がさっき出てきたエレベータに乗りこんで行ってしまった。

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