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プロローグ4

 ドクドクと波打つ鼓動と低い甘い声。それが僕の耳から離れることは無く、思い出しただけで鼓動が速くなる程だった。  そして、今日に至る。休日で学校も休み。父親も会社は休みだった。昼食を済ませて両親とリビングでくつろいでいる時に玄関のチャイムが鳴り響き、母が対応すると慎也と男が玄関に立っていたのだ。  会ったのはこれが2度目。  突然の訪問に両親は戸惑っていたけど、3日前に会社から帰った僕の様子に何かあったのかと問いただして、運命の番に出会ったかもしれないとは告げていた。迎えに来ると言っていたとも伝えていたので、突然現れたαの彼を追い返すことはしなった。  目の前の白い紙は、『婚姻届け』だ。 「あの……これって今すぐ必要ですか?」  恐る恐る相手に尋ねた。  いくら運命の番と言っても全く相手の事を知らないのだ。名刺を渡されて、『迎えに行く』と言われて別れただけだから。 「まぁ、凛人。なんてこと言うのっ」  横に座った母親は慌てた声を出した。 「す、すいません。この子ったら。急なことで驚いているだけですから、どうぞお気になさらずに……」  母は謝ると、「凛人、早く印鑑押しなさい」と促した。父親の方は面食らっているのか、無言のまま相手を見ていた。 「こちらとしましては、速やかに番となって頂き、凛人さんの身の安全の確保をと思っています。徳重家では男の番を授かるのはこのたびが初めての事です。まして、凛人さんはすでに成人されておられますので、男女関係においても無垢とまではいきませんでしょうが、清い方が望まれますので、急ぎ、嫁いで頂きたく思います」  秘書は矢継ぎ早に告げた。

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