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そういうふうにできている3

 このまま発情期が来なければ子どもだって作れないだろう。そうなった場合、結婚詐欺と言われても仕方が無い。  貰った契約書には子どもの親権は徳重家が持つと書かれていて子どもを希望しているとは書かれていなかった。話さなければならない重要な事だとは分かっているけど、話づらい。  運命の番。魅かれあう運命にあることは分かっている。未完であると分かったら、引き離されるだろうと想像はつく。  まだ、慎也に魅かれているという自覚は無い。だから、早く伝えなければとは思うけど、それができない。  まだ、婚姻届けに印鑑をついたわけではないから、契約は成立していない。契約が成立する前に、お互いが傷つく前に話さなければならない。 「契約書をもらったから、帰ってからもう一度読んでみる」  見落としがあるかもしれない。 「契約書?」  尊はまた驚いた声を上げた。 「由緒ある血筋のαだからじゃないかな?」  β同士の結婚には契約書なんてものは普通は無い。αとΩの結婚に契約書があるかどうかも分からないけど。 「お前の相手って、すっごいαなわけ?」 「すっごいαって」  尊の言い方に思わず笑ってしまった。 「笑い事じゃないっての。相手、誰? 俺も知ってる?」 「たぶん。知ってる」  大学は建築関係が主な学科だ。そんな学生が就職活動で、知らないはずがないほど有名な建築会社、「徳重ハウス工業の副社長。建築デザインの徳重慎也さん。知ってるよね?」と聞くと尊は目を見開いて俺を見つめた。  そりゃ、驚くだろう。  大学の専攻は建築デザイン。内定はインテリアデザインの会社で、徳重ハウス工業の関係会社だ。

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