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そういうふうにできている5
アンチΩのαは多い。自分たちとは違う人種だと、下に見ているのだ。あの秘書からはそれがありありと感じられた。
「徳重さん? はアンチじゃない?」
「アンチでは無いと思うよ。まだ分からない」
慎也は秘書のようにしゃべりはしない。ただ僕をじっと見つめたりはする。
「大学は? このまま卒業までは通うんだよな?」
「もうすぐ卒業だし、多分大丈夫」
今すぐどうこうということは無いはずだ。『運命の番』だとお互いが理解しているのだから、番う必要があるかはまた別の話だろう。
「まぁ、徳重ハウスの嫁になるんだったら仕事しなくても暮らしていけるだろうしなぁ。羨ましい」
「羨ましくなんて無いよ。就職活動だって頑張ったんだから。せめて相手が女だったらよかったのに」
どう見ても男だ。端正な顔立ちと、スーツに隠れているがそのスーツの上からでも分かるほどのスマートな無駄のない体躯。声も低くて男のΩの僕じゃなくても相手はいくらでもいるだろう。
だけど、『運命の番』なのだから仕方がない。
「その『運命の番』って離婚とか無いわけ?」
「どうかな……」
番になってもαから破棄されると、発情期は再開する。しかも、もう二度と番にはなれない。特定の相手を持てず、一生を発情期によって悩まされることになる。
そんなことになったら、Ωでも更に最下層の人間として扱われることになる。生き地獄だ。一方のαは何度でも番うことができる。
「どうしても惹かれ合うとは聞いたことあるけど。まだ、2回しか会ったこと無いからわからないよ」
「なのに、もう結婚するんだ?」
「いや、それが……急がないからいいって言ってくれた。時間をくれるって」
それだけでもかなりの譲歩だ。エリートのαがΩの気持ちを尊重してくれただけでもすごいことなのだから。
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