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そういうふうにできている10
声はかなりの怒りを含んでいて、髪の毛を鷲掴みすると下にぐいっと押し下げた。僕は無理やり下を向かされて、項を露わにされた。
「首に跡はないが?」
「そういうことじゃなくて……」
押さえつけられて苦しい体制のまま後ずさると、手が離されて、床に尻もちをついた。
「最近発情期が終わったばかりか? お前の使ってる抑制剤はあまり品が良いとは言えないな。甘い匂いがプンプン漂っている。俺と番う気なら今後は抑制剤を使うなよ」
「よ、抑制剤なんて使ってない」
「それでこの匂いか?」
「うっわぁ……」
尻もちを着いた僕を床の上に押し倒した。覆いかぶさってはいるが慎也が膝をついているから重さは感じない。
首に顔を埋めるようにして、「いい匂いだ。発情期が待ちきれないな」とつぶやいて耳のすぐ下の首筋に口付けた。口づけたまま口を開いて唇で甘噛みされる。
ドクンと心臓が波打って、何かが溢れ出しそうな感覚にとらわれる。
「ち、ちょっと……離して」
押しのけようとその胸を両手で押した。
逞しい胸板にドキッとして途端に緊張して、手の力が緩んだ。
「ひやぁ……」
自分の変な声に驚いて抑えていた両手で口を覆った。慎也が口付けた場所を舐めたのだ。
「何だ、甘いのは匂いだけじゃないんだな。こんなに甘いΩは初めてだな。発情期なんて待たなくても抱けるな」
慎也の手が僕のジャケットの下のワイシャツの裾を引き上げた。その手が素肌に触れて、そこからじわっと何かが身体を駆け巡る。
「ヤメろっ」
慌てて口から手を離すと裾を上げる手を叩いて、慎也の下から起き上がって立ち上がった。
「発情期を迎えるのが楽しみで仕方ないな。いつ来るんだ?」
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