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そういうふうにできている14

 受け取ったカギをカバンに入れて、後に続いて玄関を出た。  母が専業主婦だったために、カギを持ったことがない僕はカギを持たされたことに、少し緊張した。  エレベータに乗り込むと、その狭い空間の中でじっと慎也に見つめられた。慎也とは反対の壁に背中をつけてできるだけ離れている。 「な、何ですか?」 「そんなに警戒しなくても、お前ぐらいの相手なら履いて捨てるほどいる。だが、『運命の番』なら仕方ないだろう」  慎也は何か含んだように言った。 「それは、僕が相手をしなくても、僕と結婚しなくても相手はいるっていう牽制ですか?」  むっとして言い返すと、「そうじゃない」と返された。  このものの言い方や態度、僕を歓迎しているとはとても言い難い。受け入れられないなら、同居や結婚だって言いださなければいいのに。  まだ、3回しか会っていないのに。  このまま離れて、なかったことにしてしまえば、こんなつまらない言い合いをしなくても済むのに。  胸に蟠りを抱えて、地下に着いたエレベータから降りた。  慎也の車は、国産の高級車だった。黒いボディーは綺麗に磨かれていて、ドアノブに触るのも躊躇われるほどだ。 「俺が運転するから、お前は横に乗れ」  促されて助手席に乗り込み、シートベルトを付けた。慎也はよく行く店なのか、迷うこともなく目的地に着き、駐車場に車を入れた。  丸い窓が施されたお洒落な戸建てのレストラン。入り口横のライトアップされた木々が落ち着いた印象を与える。  木製のドアを慎也が開けると、背の高いすらりとした男が出迎えて、「ようこそ」と声をかけた。

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