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そういうふうにできている17

「受け入れる時間は与えているだろう。お前が俺の嫁になることは決まっているんだ。何と紹介しようが問題ない」 「何か揉めているのかい?」  トレーにペリエの瓶とグラスを乗せた智晴がやってきて、テーブルにそれらを並べた。 「お前が気にすることじゃない」  慎也はグラスを手に取ると、僕の方へと傾けた。僕はそれを受取ろうとしたが、慎也は手を離さない。不思議に思っていると、「慎也。僕が注いであげるよ」と智晴に言われて気が付いて、パッと手を離した。  注げということだったのか。恥ずかしさに俯いた。 「本当に、慎也のツレにしては可愛らしいね。この子が慎也の嫁になるなんて信じられないんだけど?」  慎也のグラスにペリエを注ぎ、僕の分も注いでくれた。 「何だ。知ってるじゃないか」 「そりゃあ、一族のトップの結婚だからね。みんな知っているよ。『運命の番』に出会ったって噂は持ちきりだよ。だけど、実物はまだ誰も知らないから、興味津々だよ」  智晴は小声でそういうと、「せいぜい気を付けた方がいいよ」と付け足した。  気を付けるって何だろうか。 「名前は?」 「柏木凛人です」  智晴は慎也とは違う色気がある。接客業だからだろうか、柔らかい物腰と言葉遣いに落ち着く。 「で? 結婚式はいつの予定?」  にっこりと僕に笑いかけた。 「結婚はまだ先だ。こいつが言うことを聞かない」  慎也は面白くなさそうだ。 「でも『運命の番』なら魅かれ合うって聞いたけど、違うの?」  面白いと思っていると分かる表情を隠そうともせず智晴は質問を続ける。慎也がつれない返事を返すことは分かっているのだろう、僕にその矛先を向けている。

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