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そういうふうにできている20

 マンションに帰ると、慎也は残った仕事があると言って自室に籠った。 「何もない?」 「何もないよ」  学食横の喫茶コーナーという名の屋外テラス。エアコンの効いた方へと学生は流れて、ここには人は少ない。休講になった時間に尊を誘った。  慎也と生活を初めて数日が過ぎた。慎也は忙しいらしくて、食事を一緒にしたのは初日の時だけだ。朝は先に出ていることが多く、顔を合わせない日もある。  だから、尊が心配するようなことは何もない。 「αとΩで同棲して……」 「同居な」  言い直すと尊はクスッと笑った。 「同居して、何もないってのも不可解だけど、まぁ、続いているならいいんじゃない」  続いているというよりも、何もないから平行線ってだけだ。 「何もないからね」 「その言いぶりだと、何かあって欲しいみたいにも聞こえるけど」  尊は差し出したカフェオレを受取って、プルタブを上げた。 「いやらしいことじゃないっての。何もないから、お互いのことも知りえないし、進展も無いんだよ。まともな会話さえもできないんじゃ、意味がないと思うんだよね」  慎也から提案されて始まった婚前同棲だけど、お互いを知るってことも含まれているんだろうけど、こんな状況ではお互いを知ることもままならない。 「それはそうだ」  僕としてはこのまま何事もなく、番は間違いでしたってなって、家に帰らせてもらった方が気が楽だ。

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