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そういうふうにできている23
この間智晴と話していたαのフェロモンのせいかもしれない。僕には効かないと言っていたけど、違う作用があるのかもしれない。
慎也との距離が縮まればこれまで以上に翻弄されそうで怖い。
「凛人、顔赤い。何想像してんの? やっぱり何かあったんじゃない?」
「何もないよ」
本当に何もない。それが余計に心配になる。
本当に『運命の番』なのだろうかと。
初日のようなことは一切ない。近づくこともない。まだ数日だけど、僕に魅力が無いのかとか……考えなくもない。
「なぁ、僕って甘い匂いとかする?」
慎也は僕から甘い匂いがするっていうけど、僕は一度だって発情期を迎えていないから、そんなはずは無いと思っている。
「僕はβだから、凛人のフェロモンは分からないよ。発情期だったら分かるかもしれないけどね」
強烈な発情期にはβも気がつくことがあるらしいことは知っている。だけど、普段のΩがβに気が付かれることはほとんどない。
「そうだよね」
αの知り合いなんていないから確かめようがない。それに、ほかのΩの発情フェロモンも嗅いだことがないから分からない。
慎也だけが知っている。
首を押さえるようにして机に突っ伏する。
「凛人?」
「ん? なんでもない」
顔が熱い。
慎也の触れた首が熱い。
ゆっくりと顔を上げると、尊が顔を赤らめて、「それだと思うけど」と呟いた。
「何が?」
「分からないならいい」
尊は手にしたカフェオレを一気に飲み干して立ち上がった。
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