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そういうふうにできている24
「ごちそうさま。ゼミ行って来る」
尊はそう言って手を振って学食から出て行ってしまった。
まぁ、カフェオレは僕のおごりだけど、ごちそうさまと言われたのは初めてだった。
尊を見送って大学の図書館に行き、駅前のファーストフードで簡単に早い夕飯を済ませた。
大学からマンションまでは電車で通っている。
帰宅ラッシュにはまだ早いが、電車は混んでいた。
今日は何時頃慎也は帰ってくるだろうか。尊に話したように慎也とは何もない。初日に押し倒されて首に口づけされたあの一回きりだ。
あの時はびっくりしたのと、慎也の色気に圧巻されて抵抗できなかった。ぐらぐらと揺さぶられる感覚は相変わらずで、思い出すだけでも鼓動は早くなる。カバンを持っていない手で、慎也の触れた首を押さえた。
つい癖になってしまっている。思い出すたびに触れてしまう。ここから熱が生まれているようで、ついつい押さえてしまう。
マンションまでは数駅だ。自宅から通っている時より十分近い。
満員電車は我慢できる。だけど、これは我慢という問題じゃない。
最初はカバンか何かが電車の揺れで触れたのかと思って、気に留めなかったがその手がずっと尻に当たっているので、身体を移動させた。だけど、ぐっと尻を掴まれて思わず身体が強張った。驚きと共に逃げようと身を捩ったが人ごみの中での移動は困難で手に持っていたカバンを尻の方へと移動させてその手をけん制した。
こんなこと初めてだ。
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