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そういうふうにできている25
周りを見渡しても誰がしているのか分からない。
気持ち悪い。
気持ち悪さに、人の迷惑を省みず移動した。相手も人ごみを分けてまで触っては来ないだろうと、ふっと息を吐いた時だった。
「いい匂いさせてるな」
後ろから耳元で声がした。それは周りには聞こえないほどの距離で囁かれて、耳朶をくすぐった。
ギョッとなって振り返ると、見知らぬ男がにやにや笑っていた。
「匂いなんて、させてない」
満員電車の中での移動は困難で、ぎゅうぎゅう詰めの中で、どうやって動かしているのか、執拗に尻やその割れ目に手を這わせて来る。
気持ち悪さに手に持った鞄で避けようとするが、製図用紙や資料の入った大きめの鞄は俊敏に動かせるはずもなく、男の手は簡単に鞄を越えてきた。
なんだっていうんだ。
今までこんなことなかったのに。
耳に男の興奮した荒い息がかかって気持ち悪い。ピッタリとしたジーンズの尻を撫でていた手が、大胆な動きに変わり、尻を撫でまわして尻朶をもんでくる。背中には男の身体がぴったりと寄せられて体温を感じた。
ぞわぞわと嫌悪だけが募って、身体を動かして逃げても、男は執拗に触ってきた。
電車の壁まで逃げたが、目の前の壁に押し付けられて、さらに男の動きが大胆になった。
後ろから前に伸びた手が、ジーンズの前を触った。
声を出そうとしたが、恐怖と嫌悪のためか、声が出ない。それに、さっきよりも身体がいうことをきかないのだ。
うわぁっ……。
電車の揺れと共に、グイッと尻に押し付けられた男のモノに恐怖を感じた。
壁との間に入ってきた男の手はぐっと僕のモノを握り込んできた。
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