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そういうふうにできている28
男のみぞおちに拳が入ったのが見えて、うめき声と共に崩れ落ちる男から僕の身体を入ってきた男が引き寄せた。
「αフェロモン使って、何が同意だ」
「げほっ……ゲフォッ、お前αか?」
「βハーフだからαっぽくは無いけどね」
「グアッ……」
エレベータの床に男は倒れ込んだ。
ふっと、身体が軽くなった。拘束されるような感覚がふっと緩んで、「あ……」と声も出た。
助けてくれた男に支えられてエレベータから降りる。
「ここで待っていて」と空いているベンチに降ろされた。すぐに異変に気付いた駅員が駆けつけてきて、助けてくれた男は駅員に丁寧に説明して、男がαであることも伝えた。駅員はエレベータの中で倒れている男を連れて行ってくれた。
「慎也の嫁さんだよね?」
嫁という言葉で思い出した。この人はこの間慎也と一緒に食事に出かけた先の店長の智晴だ。あの時の白いギャルソン服と帽子が無いからすぐに分からなかった。
ようやく自分の力で顔を上げてゆっくりと頷いた。
「もう大丈夫だよ。慎也呼んであげる」
もう、大丈夫。
そう言われて、優しい声にほっとして、一気に涙腺が緩んだ。
まだ自由にならない身体は、あふれ出る涙を止めることも、拭うことも叶わない。
「ち、ちよっと」
慌てた智晴が持っていたカバンからハンカチを取り出して僕の顔を押さえた。
「ご、ごめんな、さい。僕、怖くて……」
しゃくり上げると智晴が僕の頭を撫でた。
「怖かったね」
智晴はすぐ横に座ると僕が泣きやむまで待ってくれた。少し落ち着くと僕を支えて駅から出て、駅前の植え込みに並んで座った。智晴はポケットから取り出した携帯で電話をかけた。
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