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そういうふうにできている30

 これまで一度も発情期なんて迎えていない。未完の僕から発情フェロモンなんて出るはずが無い。慎也は、『運命の番』だから、何か感じるものがあったのかもなんて思ったけど、こんな怖い思いをするなら、一生発情期なんて来なくていい。  慎也には結婚を諦めてもらって、家で引きこもってしまいたい。 「慎也はそうかもしれないけど……。僕も甘い匂いなんて感じないよ?」  智春はスンっと鼻を鳴らした。 「慎也が来たら連れて帰ってもらって、甘えさせてもらいなね。自分の嫁だなんて言っておきながらΩを電車通学させるなんて、なんて不義理な夫だろうね」 「お、夫って、僕は、それに甘えるなんて、できない」  顔を合わせることもままならないんだから。  それに今までだって電車通学だったんだから。 「まだ動け無いでしょ。こうやってもたれるだけでいいんだよ」  智春の手が僕の頭を何度も撫でてくれた。  ようやく涙が止まって、少し落ち着いた頃、駅前に見覚えのある黒い車が勢い良く停車した。 「智春っ、これはどういうことですっ。事と次第によっては……」  慌てて血相を変えた穂高が車から飛び出してきて、叫ぶように告げる。 「穂高落ち着いて。僕が事故を起こしたわけじゃないよ」  てっきり慎也が来てくれると思っていたから落胆してしまった。  なんだろう。この虚しさに似た空虚な気持ちは。  智春に慎也が迎えに来てくれるって言われたから、期待してしまったんだろうか。  支えていた僕をゆっくりと立たせると、穂高が、「じゃあなんでこんなことに」と言って僕を受け取って支えた。 「電車で痴漢にあって、αに連れて行かれそうになってのを、僕が助けたんだよ。フェロモンに充てられててまだ動けないみたいだ。僕がしたわけじゃない」

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