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そういうふうにできている36
慎也は着ていたスーツのジャケットを脱いで、ネクタイを緩めて抜き取り、ワイシャツのボタンを上から数個外した。無造作に床に投げると、僕の横にどさっと座り、「ったく、その歳で外で泣くな」と言った。慎也の重みで沈んだソファー。もたれていた僕は慎也に倒れ込んだ。慎也はそれを邪険にする様子もなく受け止めた。
「お前は外出禁止だ」
「そ、そんなの困るよっ。大学だってあるし、来週には会社に……」
「そんな物を続けてなんになるんだ」
外出禁止だという慎也に驚いて顔を上げたが、慎也は動じていないようで、冷ややかに僕を見下ろしている。
「お前は俺の番だろう。俺が養ってやるんだから、必要ない」
「それは、そうかもしれないけど。僕は養ってもらおうなんて思ってない」
これまで誰かに養ってもらおうなんて考えたことは無い。いくら運命の番だからといって、僕の自由を奪う権利はないはずだ。
「俺に恥をかかせるつもりか?」
「恥? 恥って何。僕が大学に行ったり、会社で働いたりするのは恥ずかしいことなのか?」
僕はΩだけど、これまでだって男として生きてきた。αに蔑まれることも今までなかった。普通の男として生きてきて、急に運命の番が現れて戸惑っていることを、慎也はどうも理解してくれていないようだ。
「徳重家の嫁になるというのはそういうことだ」
「そういうことって何だよ。僕は引きこもってあんたの子どもを産めばいいってことなのか?」
「そうだ。理解しているじゃないか」
目の前が真っ赤になるほどの怒りを感じた。その頬を引っ叩いてやろうかとも思った。
「絶対に嫌だっ」
叫んだ僕に慎也は驚いた顔をした。
「絶対、あんたの嫁になんかならないっ」
持たれていた身体を起こすと、自分の部屋に向かおうと立ち上がったが、慎也に腕を掴まれた。
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