43 / 127
そういうことなのだから1
昨夜はそのまま眠ってしまった。そっとリビングに繋がるドアを開くと、「おはようございます」と声がかけられてびっくりして飛び上がった。
「昨夜はそちらでお休みになられたのですか?」
リビングでコーヒーを飲んでいたのは穂高だった。スーツを着ているからこれから仕事で、慎也を迎えに来たのだろう。合鍵を持っているらしく、これまでも度々訪れている。
「いつもですけど」
答えると、「お熱いことで」と穂高は言って、「真也様にそろそろ起きるように言ってください」と続けた。
え?
慎也を起こしたことなんて一度もない。
穂高は座ったままコーヒーを口に運んでいる。
昨日の夜は険悪なまま寝てしまって、そんな状態なのに起こしに行くなんて嫌悪でしか無い。
「穂高さんが起こしてください」
僕が言うと、「嫌ですよ」と答えた。
今日に限って僕に起こせというのは何故だろうか。
「声をかけるだけでいいですか?」
「ええ。慎也様は寝起きはいいですから」
そう言われて、慎也の寝室のドアをノックしようとすると、「慎也様はそちらですか?」と聞かれた。
「いつもですよ」
答えると、「昨夜は?」と聞かれて、「寝室は別ですよ」と返事をした。
「昨夜、あのようなことがあったのにですか?」
ともだちにシェアしよう!