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そういうことなのだから1

 昨夜はそのまま眠ってしまった。そっとリビングに繋がるドアを開くと、「おはようございます」と声がかけられてびっくりして飛び上がった。 「昨夜はそちらでお休みになられたのですか?」  リビングでコーヒーを飲んでいたのは穂高だった。スーツを着ているからこれから仕事で、慎也を迎えに来たのだろう。合鍵を持っているらしく、これまでも度々訪れている。 「いつもですけど」  答えると、「お熱いことで」と穂高は言って、「真也様にそろそろ起きるように言ってください」と続けた。  え?  慎也を起こしたことなんて一度もない。  穂高は座ったままコーヒーを口に運んでいる。  昨日の夜は険悪なまま寝てしまって、そんな状態なのに起こしに行くなんて嫌悪でしか無い。 「穂高さんが起こしてください」  僕が言うと、「嫌ですよ」と答えた。  今日に限って僕に起こせというのは何故だろうか。 「声をかけるだけでいいですか?」 「ええ。慎也様は寝起きはいいですから」  そう言われて、慎也の寝室のドアをノックしようとすると、「慎也様はそちらですか?」と聞かれた。 「いつもですよ」  答えると、「昨夜は?」と聞かれて、「寝室は別ですよ」と返事をした。 「昨夜、あのようなことがあったのにですか?」

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