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そういうことなのだから2
昨日は痴漢にあって、抑制フェロモンに充てられて、慎也と喧嘩して……。
「慎也さんとは何も無いですよ」
穂高さんは持っていたコーヒーカップをテーブルに置くと、「では、セックスもまだですか?」と驚いたように聞かれた。
「セ、セ、セックスって……そんなのあるわけないじゃないですか」
「一体何してるんですかっ」
穂高の驚きにびっくりして、「何もしてないです」と答えた。
穂高さんは頭を抱えるようにして、「昨日も何もなかったんですか?」と再確認されて、「何もなかったですけど、喧嘩っていうか、言い合いはしました」と正直に答えた。
「慎也様に口ごたえしただなんて……。あなたは徳重家の嫁になるんですよ。これから色々と勉強して……」
「それはもうお断りします」
穂高の言葉を遮った。
「そのことで、昨日は言い合いになったんです。僕たちは運命の番かもしれないけど、どうも反りが合わないんですよ。外出禁止なんて言うし、大学も会社も行かせないなんて言うし」
「慎也様がそんなことを仰ったんですか?」
「そうですよ」
穂高はため息をつくと、「昨夜、慎也様がどれほど心配なさったかご存じないのでしょうね」と機嫌悪く言われた。
「慎也さんは何も言ってなかったですよ」
慎也は僕を責めるばかりだった。僕が悪いわけでもないのに、触らせるなとか、外出禁止とか。そんなことばかりだった。
「智晴さんから電話があって、大事な商談を部下に任せて飛び出して来たんですよ。自分の番にもしものことがあったのだろうと、心配して自ら迎えに出向いたのですから」
「大事な商談中だったんですか?」
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