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そういうことなのだから6

 行き詰まってしまったレポートを置いて、休憩がてら資料を見せてもらおうと再び慎也の部屋に入った。すでに廃盤になった海外のデザイン集もたくさんあった。  本棚の一番下の端。額が入れられているのに気がついた。なんだろう。  指をかけて引き出した。 「これって……」  公募による設計で、設計者の名前は公表されずに建てられた小さな美術館。自宅の近所の公園の奥にひっそりと佇むその建物は自然の中に溶け込んで、美しく、何度も足を運んで『こんな建物を造りたい』と想い描いた建物の写真だ。  A4ほどの大きさの写真をまじまじと見つめて、裏返す。  どうしてこの建物の写真があるんだろう。 裏返すと白いシールに年月日が書かれていて、それが撮影日なのか建築日なのかは不明だが、『設計・徳重慎也』と書かれていた。  『バクン』と胸が大きく跳ねた。  これは偶然なのか、それとも運命なのか。  自分が憧れたものを創ったのか慎也だなんて。改めてその写真を見つめる。  僕はこれを創ったのが慎也だとは知らなかった。設計者も公開されていないから知ることもできなかった。  設計に憧れて、建築士になりたくて大学を選んだ。就職先は慎也の経営する徳重系列の設計事務所。  運命の番。何処かで出会うように運命に操られているのかと疑わざるを得ない。 「僕は、僕の意志で設計を学んだはずだ」  運命に翻弄されたわけじゃない。  だけど、どうしても惹かれ合うのが運命の番。  出会ってしまう前から魅かれ合うようになっていたのかと小さくため息をこぼした。

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