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そういうことなのだから11
特級階級を占める数少ないα。蔑まれているΩなんてとるに足らないものなのだろう。僕はβとしてこれまで過ごしてきたし、αとの接点なんて殆どなかったけど、これがαの考え方なのだと、改めて思い知らされた。
β同士の普通の両親。仲のいい2人のような家庭を築きたいと淡く思ってはいたが、自分がΩという烙印の上に、αからのこの扱い……。
いくら運命の番が魅かれ合う関係にあるとしても、未だ慎也に対して恋愛感情を持てない。
それは、慎也も同じだろう。
「これから先のことはお2人で相談してください。発情期さえ来れば解決します」
穂高はそう言うと日程の書かれた書類を広げた。
僕が未完のΩだと言ったら、この縁談は白紙に戻るだろうか。
「発情期が……来なかったら、白紙になりますか?」
「あなたがΩである以上、白紙にはなりません。慎也様と凛人さんは運命の定めた番です」
「何を迷うことがあるんだ。お前は何が気に入らない。何も文句はないだろう?」
慎也はため息を零すようにつぶやく。
「あなた達は特級階級で人を軽んじた生活をしていたんだろうけど、僕は普通のβ両親と生活してきたんだ。好きになった人と結婚して、普通の家庭を築くものだと信じて来たんだ。僕は確かにΩだけど、いくらでも変わりがいる人間と扱われたくないっ」
世間には仮面夫婦もいる。政略結婚で仕方なく結婚した人もいるだろう。
だけど、僕は好きになった人と結婚がしたい。いくら最下層のΩでも、キスだってセックスだって、好きになった相手を求めたいし、求められたい。
「それがなんになるというんだ」
慎也の声は冷たい。
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