注目を集めていることに焦った穂高に促されるが、慎也は「ここで構わない」と言って今立ったばかりの席に座りなおした。 　穂高は、「私はあちらに……」と引こうとすると、「お前もここにいろ」と呼び止めた。 　穂高が同じテーブルの椅子に座ると慎也はワインを注文して、穂高にはコーヒーを注文した。僕の前にはなぜだかパフェが届いた。 「子ども扱いされている」 　僕が呟くと、「まぁ、凛人さんは幼く見えますから」と穂高が補足した。 「で？　お前はどこに行きたいんだ？」 「行きたいところなんて……」 　あまり堅苦しいところでなければどこでもいい。オペラも特別席じゃなくて、一般席か入門編的な内容がいい。できることならオペラよりも映画がいい。 　恋愛映画よりもアクション映画。 　食事だって、こんな絢爛豪華なレストランよりもファミレスやファーストフードで十分だ。 「そんなところに慎也様を……」 　穂高は驚いたが、「明日はそうしよう」と慎也が言った。 「明日？」 「４日間ほど慎也様はお休みを取られています」 　抱えている仕事が落ち着けば慎也は休みが取れると言っていた。その休みを利用して関係改善に努めてほしいとも。 「これって、僕のためだったんですか？」 「そうですよ。慎也様が凛人さんのために用意してくださったんですよ」 　理由も言わずに急に連れ出されたので理解できなかったのだ。 「それならそうと最初に言ってくれればよかったのに……」 　何か仕事の付き合いかと思っていた。そういわれていたなら僕だってもっと友好的な態度もとれたのに。