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それがそうなら6
「明日は……明日も一緒に出掛けるんですか?」
「明日はお前が考えろ。俺の案ではつまらないのだろう。場所は穂高に伝えろ」
「それなら、穂高さんは付いてこなくていいです。僕が慎也さんを連れて行きます」
監視役なんていらない。車だって慎也に運転してもらえばいい。二人の距離を縮めるなら二人きりの方がいい。誰かを待たせていると思うと落ち着かない。
「ですが、何かあったら……」
穂高は心配に慌てた。
αの慎也が他のΩに誘惑されたり、攫われたりしたらという危惧だろう。αが一人で行動することが危険な事は僕も分かる。
お互い大人なのだから何かあれば対処はできる。
「携帯で連絡します。大丈夫です。子どもじゃないんですから」
僕は目の前のパフェの一番上のクリームをスプーンですくって口に運んだ。上質なクリームは濃厚で、口いっぱいに甘さが広がった。
「甘いものが好きなのか?」
甘さにほほ笑んだ僕に慎也が訪ねた。
「嫌いじゃないです。でも、辛い物は苦手です」
さっき飲んだエスプレッソの苦みがクリームによって中和された。二口目のクリームは甘かった。
「慎也さんは甘いものが苦手でしたね」
初めて家に行ったときに渡したお土産は改めて穂高に渡した。
「『餡子』が苦手なんですよ」
穂高が訂正した。
「ああ、僕も餡子はあまり得意ではないです。チョコの方が好きです」
「チョコレートは好きだ」
慎也は穂高のコーヒーカップの横に置かれたスプーンで僕のパフェのチョコレートアイスをすくって口に運んだ。
「じゃ、明日は美味しいチョコレートのアイスを食べに行きましょう」
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