62 / 127

それがそうなら8

 慎也は冷蔵庫からチーズやディップを取り出すと、「お前のも作ってやる」と言って、手際よくサンドイッチにしてくれた。 「とてもおしゃれになりました」  彩の少ない朝食が一気に華やいだものに変貌した。 「そんな大したことじゃない」  寝巻からジーンズとシャツに着替えた慎也は、「朝のコーヒーは濃い目がいい」と言いながらコーヒーを口に運んだ。  テーブルの上には朝食と一緒に錠剤が置かれている。 「これ、本当に飲む必要がありますか?」  発情期を抑える『抑制剤』だ。穂高が用意したもので、付き添わない条件として渡されたものだ。  発情期とは無縁の僕としては飲みたくない。  飲んでおかしなことになるのも怖い。  これまで一度も飲んだことは無い。 「別に飲まなくても大丈夫だろう」 「ですよね」  それに、昨日、慎也は『俺がなんとかする』と言ってくれた。今日は慎也が一緒に出掛けてくれるのだ。この間のようにひとりで電車に乗ることもない。  錠剤を念のためとポケットに入れた。 「どこに行くんだ?」  若者が集まる繁華街を伝えて、買い物をしたいと伝えた。  今日はハウスキーパーは休ませたので夕飯を考える必要がある。昨日食べたいと言ったチョコレートアイスでは夕飯にはならない。  何か作るか、外で済ませるか。 「夕飯はどうします?」 「作れるのか?」  期待する眼差しに、「物によりますけど」と答える。よほど難しいものでなければ、ネットで調べて作れる。専業主婦だった母親と台所に立つこともよくあったから、簡単な家庭料理なら作れる。

ともだちにシェアしよう!