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それがそうなら8
慎也は冷蔵庫からチーズやディップを取り出すと、「お前のも作ってやる」と言って、手際よくサンドイッチにしてくれた。
「とてもおしゃれになりました」
彩の少ない朝食が一気に華やいだものに変貌した。
「そんな大したことじゃない」
寝巻からジーンズとシャツに着替えた慎也は、「朝のコーヒーは濃い目がいい」と言いながらコーヒーを口に運んだ。
テーブルの上には朝食と一緒に錠剤が置かれている。
「これ、本当に飲む必要がありますか?」
発情期を抑える『抑制剤』だ。穂高が用意したもので、付き添わない条件として渡されたものだ。
発情期とは無縁の僕としては飲みたくない。
飲んでおかしなことになるのも怖い。
これまで一度も飲んだことは無い。
「別に飲まなくても大丈夫だろう」
「ですよね」
それに、昨日、慎也は『俺がなんとかする』と言ってくれた。今日は慎也が一緒に出掛けてくれるのだ。この間のようにひとりで電車に乗ることもない。
錠剤を念のためとポケットに入れた。
「どこに行くんだ?」
若者が集まる繁華街を伝えて、買い物をしたいと伝えた。
今日はハウスキーパーは休ませたので夕飯を考える必要がある。昨日食べたいと言ったチョコレートアイスでは夕飯にはならない。
何か作るか、外で済ませるか。
「夕飯はどうします?」
「作れるのか?」
期待する眼差しに、「物によりますけど」と答える。よほど難しいものでなければ、ネットで調べて作れる。専業主婦だった母親と台所に立つこともよくあったから、簡単な家庭料理なら作れる。
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