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それがそうなら9

「帰りに考えましょう」  あちこち寄り道して帰りが遅くなるかもしれないし、また、言い争ってさっさと帰ってくる可能性もある。  なるべくなら喧嘩はしたくないのだけど。  慎也は先に食べ終わると、スマホを手に取って何やら熱心に調べていた。  真剣なまなざしを盗み見る。  さすがは由緒正しいα様だよな。  有名な俳優や芸術家にはαが多い。産まれながらに天才的な遺伝子を持ち、将来を約束された人間だ。その中でも、慎也は選りすぐりのα集団の家系。見惚れるほどの美貌なのは仕方のないことだろう。 「どうした?」  スマホから顔を上げた慎也に聞かれて、見つめていたことに気が付いた。 「何でもないです」  食べ終わった食器を持ってキッチンに下げる。据え付けの食器洗い洗浄機に食器を入れると自室に向かう。  カバンと財布、スマホを持って部屋を出る。  そういえば、携帯の番号……。 「あの、携帯のアドレス、教えてもらってもいいですか?」  ソファーに座っていた慎也に言うと、「何だ、知らなかったのか?」と言って、手元のスマホを弄った。すぐに僕のスマホが振動した。  そこには見知らぬ番号が表示されていて、「それが俺のだ」と慎也が言った。  なんだ、僕のアドレスは知っていたんだ。  スマホを弄って登録すると、今度はメールの着信があった。 「ラインって……してますか?」  それなら既読が付くから、慎也が忙しくても見て伝わったことが分かる。 「ああ」

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