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それがそうなら10
慎也がIDを言ったのでそれを登録した。
「あまり使ってない」
「見たりはしますよね?」
確認すると、「気を付ける」と言ってくれた。カバンにスマホを入れると、慎也が立ち上がって、「待っていろ」と自室に向かって行った。
こんなに簡単に教えてもらえるなら、早く聞けばよかった。
慎也はシャツの上からジャケットを羽織って出てきた。
今日は仕事じゃないから、長めの髪はラフに降ろしていて、普段よりも柔らかい雰囲気で、若く見える。大学生の僕と一緒にいてもおかしくは無いだろう、お兄さん程度に見えるほどだ。
駅までは数分だ。一緒に並んで歩くことに緊張した。電車に乗り込むと日曜日で混んでいる車内で慎也が眉間に皺を寄せていた。
「満員電車って乗ったこと無いんですか?」
「電車にほとんど乗ったことがない」
今は穂高さんが送り迎えしているから電車に乗ることは殆ど無いだろう。これまでも運転付きだったんだろうなと想像できた。
慎也はドア側に僕を立たせると、座席横のバーに手を添えた。
「人が多いところは危ないな」
慎也の言葉に首をかしげる。
慎也が笑ったような気がして、「何?」と尋ねると、「なんでもない。買い物は何を買うんだ?」と聞き返された。
「本屋で雑誌を買いたい。それと、歯磨き用のコップを買いたいです」
歯磨き用のコップを実家に忘れてきてしまった。実家に取りに行ってもいいのだけど、子どもの時から使っているキャラクターの絵のコップは慎也のおしゃれな洗面所にはとても恥ずかしくて置けない。シンプルなコップを一つ買いたいのだ。
「それなら、お前用の食器も一緒に買おう」
「僕用の?」
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