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そういうことだから4

 怒りに腕組みをした穂高が待っているので、待たせて怒りに油を注ぐようなことはことにならないようにさっと服を着込むとリビングに出た。  ソファーに座るように促されて穂高と向かい合わせに座った。 「あなたはまだ徳重家の嫁になったわけではありません。それなのにあんなところで発情して写真でも取られたらどうするつもりですか。写真だけならまだしも、警察沙汰にされて泥でも塗られては困ります」 「……はい」  返事をしてうつむく。  いまさらΩだったことを痛感する。  穂高に責められても仕方が無い。僕はΩなんだ。  あれほど簡単にαを興奮させることができる。 「私は抑制剤を渡していたはずです。何故、飲まなかったのですか。つい先日痴漢に襲われたばかりだったじゃありませんか」  その時も甘い匂いがするなんて言われた。僕には自覚が無かったけれど。 「慎也さんが、飲まなくても大丈夫だろうって……それで……」  飲みたくなかった。発情期のない自分には必要ないと思ったから。 「自分のフェロモンが制御できないのですか? Ωの自覚が足りないんじゃないですか? 凛人さんはもう22歳でしょう。高校生でもあるまいし、自分のヒートくらい制御してください」  そんなことを言われても僕は発情したことなんて無い。  Ωの烙印を押されていても、βとして過ごして来たのだから。 「穂高。俺も悪かった」  先にシャワーを浴びたのだろう、着替えた慎也が自室から出てきて、穂高の隣に座った。 「慎也様は仕方がありません。αの性なのですから」  Ωの発情期で起きる事故。それは大概Ωの責任にされる。αは特別な人間だから仕方がない。

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