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そういうことだから6

 それができたら僕はΩでありながらβのふりをできるはずだ。 「ち、ちょっと待って下さい」  穂高が遮った。 「いい匂いとかなんとか言われて、戸惑ってるのは僕の方なのにっ。僕はこれまでだって、βとして生活してきたんだ……今更、Ω、Ωって言われて……」 「落ち着きなさい」  唇を噛み締めて両手で頭を抱えた。穂高は僕を押さえつけようとして手を伸ばしたけど、それを振り放した。 「触らないで……どうせΩなんて汚いとでも、思っているんだろうっ。僕だって、好きでΩに生まれたわけじゃないっ」  β同士の両親に育てられて、発情期もなく突然Ωと言われて訳も分からない暗闇に落とされた。可愛がって育ててくれた両親も僕がΩだと分かった途端によそよそしくなって、徳重家の嫁に貰われることを喜んだ。  大切に思ってくれていることは分かっていても、僕は疑わずにはいられなかった。  悔しさと怒りがないまぜになって、何が言いたいのか、自分でも分からずに涙がこぼれた。握りしめた手に爪が食い込む。 「嫁だって、結婚だって……発情期なんて、僕には関係ないっ……僕は、ただ、……」  声は小さくなっていく。  嗚咽が混ざって、言葉にならない。  番になって庇護される立場になるとしても、僕は僕として生きたい。  運命の番が惹かれ合う運命だとしても、僕は僕の選んだ人と一緒になりたい。  それが、その相手だとしても……。  ふっと、包み込むように抱き締められた。 「凛。少し、落ち着け」  慎也の声が耳にささやかれる。ぐっと強く抱き締められる。

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