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そういうことだから8

 つい、言ってしまった。いつかは話さなくては思っていた。ちゃんと話すつもりだった。 「…………」  黙ったままうつむくと、慎也はそれをどう受け取ったのか、「まさか、他の男の子どもでもいるんじゃないだろうな?」と聞いてきた。 「そ、そんなことはないです。いつからっていうか…………最初からないです……」 「最初から?」  穂高に再確認されて頷いた。 「それは、どういうことでしょうか?」 「僕は……一度も発情期を迎えたことがありません」  穂高は驚いて声を詰まらせた。 「Ωは遅くとも第二次成長期を過ぎた頃には発情期を迎えるはずですが」 「そうですね」  肯定はする。確かに、教科書や一般の知識としてはそうなのだ。  だから、間違いなどが起きないように高校生になったら血液検査が行われるのだ。  それで、僕もΩと判明したのだから。 「あなたの戸籍や保険証にも、間違いなく、Ωと記されていますが……」 「僕は、まだ、一度も……発情期を迎えていません」  もう一度同じことを繰り返す僕の言葉に穂高は絶句した。そして、長い溜息を吐いて机に突っ伏した。  慎也を見ると眉間に皺を寄せている。 「だけど、運命の番ってことは分かったんですよね?」  穂高が顔を上げる。 「それは……分かりましたけど……」 「ですよね。これだけ、真也様に反応していて、発情期を迎えていないと言われても信じられませんが……」 「そうは言われても」  黙っていたことは謝るが、嘘は付いていない。

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