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そういうことだから9

 それに慎也に反応していることは僕にはわからないのだから、どうしようもない。 「確かに俺にしか反応はしてないようだが、この間の電車でのことはどうなんだ?」  発情期を迎えていないのに他のαを引き寄せてしまった。それも理由はよく分からない。 「あの人に『いい匂いがする』とは言われたけど、僕は何もしてないよ」 「真也様に対してだけの反応は私も確認しています。一度精密な検査をした方がいいです。凛人さんの両親はβですし、突然変異のΩですから、少し、心配ですね」  穂高は横に置かれていた自分のカバンから手帳を取り出して開いた。 「その結果次第ではこの度の結婚の話も白紙となるかもしれません」  穂高の言葉が胸に刺さる。  望んでいたことなのに、今更言われるとショックを受ける。 「検査を受けて結果が分かるまでは、ご実家に……」 「穂高、ここにいてもいいだろう」 「いいえ。何かの間違いがあってからでは困ります。既成事実など作られては……すいません。言葉が過ぎました」  またうつむいてしまった僕の頭を慎也が撫でた。  結果次第で、慎也とは引き離される。  運命の番だけど、番えなければ伴侶とはなれないし、その運命を引き裂くこともできない。  互いに、運命の番と分かっていながら、別の相手と番わなければなら無いということだろう。  ただ、発情期を待てばいいということじゃない。  検査は、発情期がすぐにでも来るかどうかだろう。いくら相手が運命の相手でも、番えなければ意味が無いのだから。 「僕は、実家に帰ります」  最初から話しておけばよかったんだ。  どうにかなるかもしれないなんて、淡い期待なんか持たずに。  凛と呼ばれて、番だと選ばれて、それだけでいい。 「すぐに支度します」  慎也はまた眉間に皺を寄せている。  引き止める言葉はない。  するりと立ち上がると自室へと向かった。

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