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そうやって、そうなって1

 穂高に連れられて実家に帰された僕は、両親に歓迎はされたものの、どこか落ち着かなかった。  名門のαの家に嫁に出す予定の息子が返されたのだから、仕方がないとは思っても、よそよそしい実家に、『やっぱりΩだからか』と落ち込んだ。  両親も僕に発情期が無いことは知っていた。だから、そのことを話して返されたと説明したら納得はしたけど、残念がっているのはわかった。  それに、穂高が丁寧に両親に説明してもし白紙になっても、僕の生活は保障してくれると契約書を置いて行った。  完璧なΩなら発情期を迎えて、番になって、慎也の嫁になって、子どもを産んでいたかもしれない。最下層のΩの誰もが憧れるシンデレラストーリー。 出会って、運命と言われた。このまま結ばれてしまえば僕はシンデレラになれただろう。  だけど僕は偽物だった。偽っていた。  隠していたことで、慎也を騙して裏切った。  Ωの本能が上等なαに反応してしまっただけだ。  運命の番に流されただけだ。  受け入れられないと反発していたのに、嫁と呼ばれて嫌悪していたのに、いつの間にか慎也を受け入れていた。  委ねてしまえと言う慎也に流されていた。  帰りたいと望んでいた実家に返されてこのまま無かったことになればいい。ほんのわずかな時間だった。  鬱々とした気持ちで過ごして家族との会話する気になれず僕は部屋に引きこもった。  外に出るのが怖くなった。 慎也にだけ発情しているのは自分でも分かっていた。それはこれまでαに会ったことがなかったからかもしれない。Ωの本能が穂高や智晴よりも上等なαの慎也に反応しただけかもしれない。  理由が分からないのは憶測ばかりで怖い。  痴漢に遭った理由も分からない。

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