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そうやって、そうなって3

「ああ、本当に返されたんだね」  のんびりとした口調で言いながら僕の頬を撫でた。  うん。智晴には反応しない。  やっぱりαに反応したんじゃないと改めて思い知らされる。自分が誰を求めているのか。  僕と慎也は間違いなく運命の番なのだ。 「一緒に行こう」  智晴は表に車を留めているからと僕を連れて行こうとしている。 「いえ、僕は出ない」  出かけようと智晴が腕を引く。 「大丈夫。こんなとこで引きこもっていてもいい考えなんて浮かばないよ」 「何も考えたくない」  何を考えても思考は向いてしまう。  向き合いたくないのに、心はそちらを向いてしまう。だけど、外に出る勇気も出ない。  強引な智晴に連れ出され、引き篭もっていることに心配していた母に背中を押されて、強引に車に乗せられて連れて行かれたのは智晴の店だった。開店準備中の店の奥。慎也に連れてこられた指定席だ。  僕を椅子に座らせて、智晴自らコーヒーを淹れてくれた。 「前に言ったけど、覚えているかなぁ? 僕はβハーフのαなんだ」  痴漢から助けてくれた時に言っていたのを覚えている。αっぽくないのはそのせいだと。 「言っていた気がします」  僕の言葉に頷いた智春は、「僕の産みの母と凛人君は似てるんだ。ああ、突然変異じゃないよ。母が惚れ込んで、βの母を無理やり嫁にしたってことなんだけどね。だからかなぁ、凛人君がほっとけないんだよ」と表情を曇らせた。

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