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そうやって、そうなって4

「智春さんのお母さんはαとβなんですね?」  レズカップルやゲイカップルはαには珍しくない。αの子どもを得る為なら性別も厭わない。Ωだって、αの母になればその恩恵を得ることもできるからだ。 「そう。αの母は慎也の母親の腹違いの妹」  複雑な家庭環境のようだと思いながら頷いた。 「αの場合、Ωの同性も異性も妊娠させることができる。それはαの女性の場合も同じ。その子どもはαかΩのどちらかになる。僕の場合は、αの母がβの女性を無理やり妊娠させて子どもを産ませたんだ」  女性同士の上にβハーフ。 「βの母はαの母の親友だった。僕を産んで、僕がαだった事を悔やんで……ショックを受けて、精神を病んでしまった。僕が5歳の時には僕が自分の子どもだって理解することもできなかったよ。徳重家からは離縁されて、僕もβハーフだからって追い出された」 「αのお母さんは?」  親友に自分の子供を産ませるくらいの愛があったんじゃないのか?  どうして助けてあげないのか? 「別のΩと番になったよ」 「え?」  別のΩ? じゃあ、親友だった智晴の母は捨てられたってことだろうか。 「徳重家ってのは、名門を重んじる家柄だからね。男のΩと番になってαの子どもを産ませたよ。βの母には支援してはくれていたけど、それも最低限ね」  智春は苦笑いで僕をみつめる。 「βの母は幸いいい人がみつかって、今は幸せに暮らしているよ。僕には会ってくれないけどね。僕は徳重家からは出されたけど、αだったからエリート教育を受けられて店を持つこともできた。まぁ、純粋なαではないから、αからは蔑まされるけど。だからね、徳重家もαも僕は嫌いなんだ」  偏にαといっても格がある。徳重家に振り回され、αからも迫害を受ければ嫌いにもなるだろう。

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