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そうやって、そうなって10

 車はすでに自宅とは違う方向へと進んでいて降りることもできない。家に帰ってもする事は無い。いつ発情するのか分からない不安で人に会うのも躊躇われる。慎也と出会う前には知らなかった自分のΩの本能。痴漢を引き寄せたように知らないうちに発情フェロモンを出してまた襲われるんじゃないかという恐怖で引きこもっている。  慎也というαに守られていたから安心して外に出られたのだ。恐怖を取り除いてくれたのが慎也だったから。  穂高に渡された就職先へもきっと行けないだろう。  自分がこんなにも弱く、庇護される存在なのだと打ちのめされた。慎也が僕を家に閉じ込めた理由も今なら理解できる。心配してくれた理由も。  僕は……Ωなのだ。  俯いたまま唇を噛み締める。  慎也に会える。まだ、会うことが叶う。  だけど、会うのは怖い。この一週間ずっと慎也の事を考えていた。  気持ちを自覚した自分がどうなってしまうのか、慎也がどう受けとめるのか、拒否されるのか。  まだ破談にはされていない。運命の番という鎖はまだ繋がったままだ。  慎也にだけ発情しているようだとは薄々自覚している。そして、慎也がそれに煽られてしまう事にも。  数日間を共に過ごしても慎也と打ち解けたとは思えない。だけど、惹かれあい、出会う運命だったと所々自覚させられる事はあった。運命だと信じさせられた。  それは僕だけじゃないと思っている。 「着きましたよ」  穂高に言われて顔を上げた。 「会いたくない」  怖い。  拒まれることも。運命も。慎也も。  外に出るのも。 『ガチャン』

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