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そういうふうにできていた16
「運命のあなたでなくてもΩはいくらでも用意できるのですよ。この猶予が最後のチャンスです。心配しなくても、あなたの今後は徳重家から支援させて頂きますので安心してください」
「穂高、事を急ぐな……。また連絡する」
慎也は立ち上がると僕の前に立ち、「2人だけで過ごす時間を。急を要する仕事だけよこせ」と言って僕の瞼を指先が拭った。
頬を涙がこぼれ落ちるのを感じた。
甘かった時間が苦しいものに変わる。発情期だと認めて貰うことも叶わず、誘発剤を疑われて、3カ月の期限を与えられて……。
「そのような勝手ができ……」
「できるだろう。できなければ徳重を辞めるぞ」
慎也は徳重家の跡取りだ。そうで無くても才気美麗に恵まれた純粋なαだ。
αの中でも頂点に近い純血だ。
勝手が通らないはずもない。
「分かりました。ではここで改めて同居生活をして頂くように手続きをさせて頂きます。慎也様の休暇はいつまでに?」
「ああ。来週には仕事に戻る」
僕を見下ろしたままの慎也を見上げる。
来週までは3日しかない。再会して甘い時間を過ごしたはずなのに、なんだかわだかまりばかりが胸に蓄積されていく。
慎也に見つめられても抑制剤が効いているのか、身体に熱は感じない。焦がれるような衝動もない。
だけど、確かに慎也を想う気持ちはある。
3ヶ月の猶予を慎也があっさりと受け入れた事に突き放されて落胆し、涙がこぼれる程に。2人だけの時間をどう過ごすのか、不安はある。
「では私は失礼します」
穂高が立ち上がって出て行った。
見上げて見つめ合ったままの慎也は、「厄介だな」と呟いた。
その言葉に心が冷えた。
「お前が女ならすぐにでも子どもを作ってしまえばいいんだが……。男は面倒だな」
今更な事を言われて冷えた心はさらに臆病になる。
「じゃあ、Ωの女性と番えばいいじゃないか」
「だけど、俺の運命はお前だ」
「……」
跪いた慎也が、「やっと手に入れられそうだったのにな」と呟いた。
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