110 / 127
それからそうなるように2
番になるために。
慎也の気持ちは分からない。後継者問題でαを産めるΩが必要なだけかもしれない。無理矢理に作らされた子どもの事も一因かもしれない。
『好きな設計さえできればいい』と智春は言っていた。僕と番になっても、その後は?
夫婦としてやっていけるのか。
運命の番なんて、きっかけにしか過ぎない。惹かれ合う運命だとしても……。
できることなら……愛されたい。
あの情熱が、欲望が、愛であったなら。
迎えることの無かった発情期。何がきっかけなのかも分からないし、次はいつかも分からない。3ヶ月の間に来るかも分からない。
発情期じゃなくても慎也は抱けると言ってくれた。発情期が来る前に僕を抱いてくれた。求めてくれた。
それはもしかしたら……。期待してしまう。
ぐるぐると答えのない思考に捕らわれる。答えが出るのも怖い。
昼前にやってきたハウスキーパーは昼食と夕食を用意して掃除も済ませるとすぐに帰って行った。
慎也が帰ってくるのは午後8時を過ぎてからで、穂高も一緒のことが多い。穂高は翌日のスケジュールと迎えにくる時間を伝えて帰って行く。たまに夕食を食べていくこともある。
リビングでテレビをつけたまま会話もほとんどなくて、緊張していた。
この間出させてもらえなかった時とは状況が違う。気持ちは少なからず通じて、発情期だって迎えて、番になることを我慢した。
そろそろ慎也が帰ってくる。
時計を気にして落ち着かない。ハウスキーパーの用意していった夕飯を温め直す。
用意されている慎也のいつも使う皿と、セットになっている来客用の皿。僕用の皿を用意しようと言ってくれた。それは僕を受け入れてくれたってことなんだろう。
ともだちにシェアしよう!