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それからそうなるように3

 番になれば一緒に買い物に行くこともできるだろう。慎也にしか通じない発情になれば今までβとして過ごしたように生活する事もできる。  そうしたらひとりで出かけることもできる。今はまだ怖いけど、元にもどれるだろう。  鍋の中身をお玉でかき混ぜた。  暇を持て余して待つよりも、料理したり買い物したりして慎也の帰りを待つこともできる。  ああ、でも慎也は番が欲しいだけかもしれない。番になったその後はどうするのか聞いたこと無かった。  でも、慎也は『嫁』と紹介した。  嫁って……。  恥ずかしさに顔が赤くなる。慎也の帰りを待つって、まるでそのものじゃなか。  ぐるぐると鍋をかき回していると、玄関から音がして慎也と穂高が帰ってきた。 「お、おかえりなさい」  2人はキッチンにいる僕を同時に見つめて、「9時には迎えにきます」と言って穂高は慌てて帰った。  慎也はキッチンカウンターに肩肘をついて、「何してるんだ?」と聞いた。 「夕飯を温めてます。ビーフシチューなんですけど。すぐ食べますか?」  じっと僕を見つめてから、「ああ。着替えてくる」と返事をした。  何か言いたいことでもあったんだろうか?  シチューやご飯をよそって、冷蔵庫に入れられたらサラダを並べた。慎也はスーツからラフな格好に着替えて洗面所から戻って席に着いた。僕が座るのを待ってから食べ始めた。 「今日は何をしていたんだ?」  昨日も聞かれて、読書と答えた。それは今日も同じだ。 「甘い匂いをさせていたから何かしていたのかと思ったが、違ったのか?」

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