113 / 127

それからそうなるように5

 慎也はため息をつくように呟くとそれ以上しゃべらなくなった。  僕は慎也の答えにむっとしながら会話を諦めた。  発情期が来ない。一度は迎えたし、まだ数日しか経っていない。発情期が来たからもう未完じゃないけど、次がいつくるかなんて分からない。普通のΩなら3ヶ月周期でやってくる。  3ヶ月もこんな状況が続くのだろうか。  なに不自由のない軟禁状態だけど会話もなく、する事も無いのは不安だ。  発情期って……自分から望んで発情できるんだろうか。だけど、それって……自分から誘うってことだ。それって恥ずかしいな。一度は関係を持った。その快感だって知っている。  揺さぶられるような、自分を引き出されるような身体の感覚。じれったいくらいの焦燥感。もっと、もっとともがいて、欲しがった。それで誘発されて発情したんだろうか。  Ωだけど抱かれたいと焦がれた事は今まで無かった。  運命の番は引かれあうといわれているけど、僕は未完だった。  だけど、僕は自ら慎也を求めた。  出迎えた慎也に自ら、委ねた。  恋……している。  焦がれる程の。  リビングのソファーで膝を抱えて顔を伏せる。  望まれていると信じたい。  僕が未完だったのは運命の相手に出逢うためだったのかもしれない。  発情期の引き金を引いたのは、慎也が欲しいと恋い焦がれた想いだ。このαが欲しいと、慎也が欲しいと恋い焦がれたからだ。  慎也が近づいたら甘い匂いを発するのは、僕が欲しいと望んでいるからだ。

ともだちにシェアしよう!