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それからそうなるように6

 痴漢にあったとき……僕は慎也を思っていた。迎えに来てくれた慎也に発情したのは、来てくれたという安堵感。  ああ、そうか。僕は出逢った瞬間に恋に落ちていたんだ。  慎也が好きだと、僕の心が自覚して慎也に抱かれて、やっとΩの性が目覚めた。  慎也を想うと暴走する発情は、慎也と番になるためにΩの性が働いているんだ。  待っていても、僕の発情期は来ない。  慎也が欲しいと……強く望めば起きる。  誘発されれば、慎也に望まれて番に成れるチャンスがあればきっと発情する。  でも、どうやって?  慎也は必要以上に近づくこともないし、寝室だって別だ。 「はぁ……」  自分の溜め息が熱を持っている。フェロモンをかぐことは自分ではできないけど、自分の身体が発情によって熱く熱を持つことは分かる。  やっぱりそうなんだ。慎也を想うと暴走する。  近づけば余計に発情する。  あの発情期の快感を、焦燥感を知っている。慎也に与えられる溢れるほどの快感は怖い。αから与えられる充足感。それだけを求めて、羞恥も精神も見失ってしまう恐怖。  この間は初めての発情に戸惑ってばっかりだったから慎也にはどう見えただろうか。  近づかないのは……。  僕が匂いを出しているのを、慎也はアプローチだと言った。  慎也は僕が発情する引き金を知っている。だから、昨日帰ってきた時に、『何しているんだ?』と聞いたんだ。僕が慎也を想っていた事が分かっているから。  分かってて、3ヶ月の猶予を取り付けたのは僕の気持ちの整理を待っているということだろうか。  番に……。  慎也に愛されて番に、なりたい。  発情期じゃなくても慎也は僕を抱けると、求めてくれた。  早く、帰ってこないだろうか。  ポケットから取り出した携帯を見つめてテーブルに置いた。テーブルの向こうの窓はうっすらと暗くなっているが、慎也が帰ってくるのは数時間後だ。  夕飯はハウスキーパーが用意してくれたから温めるだけだ。ゆっくりと立ち上がるとまだ早い時間だけど風呂に向かった。

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