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そういうこと、だから2

「いくら待ったところで、それは偽れない」  待ってくれるのは、慎也がそれを受け入れているからだ。戸惑う僕が運命を受け入れるのを待っているからだ。 「お前が未完成でもそれは偽れない」  頷いた。運命は偽れない。  惹かれ会うのだ。慎也だって、僕に惹かれる運命。  運命を受け入れて委ねる。慎也に委ねる。  年上で、大人で、上等なαの慎也は、僕を受け入れて、導いてくれる。慎也はそれを理解して、僕を待っていてくれた。 「やっと、受け入れたよ。僕は、慎也さんの運命だ。もう逃げない。向き合うよ」  もう一度重なる唇。両手を慎也の首に回して引き寄せて、薄く唇を開くと慎也の熱い舌が口内へと入り込んだ。自ら舌を絡ませると、ぐっと身体を押されて2人分の重みを受け止めたソファーが深く沈んだ。  慎也の甘いフェロモンに煽られて、クラクラする。回した両手でスーツの肩を握り締める。  深い口づけに熱い吐息が混ざって、甘い唾液が媚薬になって互いを誘惑する。もっと欲しいと引き寄せるのに時間はかからず、がちっと音を立てて歯がぶつかると慎也が唇を離した。 「もっと甘えろ」  身体の中にある熱が溢れて、「慎也、さんが。欲しい」と言葉にした。委ねると抑えていた熱は一気に溢れた。 「僕の発情期は、慎也さんなんだ」  未完じゃない。決められたαだけに発情する。求められれば発情する。恋をして、目覚めたんだ。恋しい想いが、引き金になって発情期が起きる。  慎也のフェロモンに充てられて、受け入れた身体は熱く焦がれて発情している。番になる前から既に運命は番っていたんだ。  証人なんていらない。待てない。

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