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するようになっていた2
「お前は俺とお前の運命が定めた番だ。ほかに変わりはいない」
「そうだけど、そうじゃなくて。運命の番を抜きにして……慎也さんがどう思っているかを……知りたい」
慎也の瞳を見つめる。
「お前は、運命の番以外何者でもない。お前が運命の番で無かったら惹かれることも、手に入れたいとも思っていない」
冷水を浴びせられたかのように熱が冷める。高鳴っていた心が苦しいほどに痛んだ。
僕自身には魅力がないということだろうか?
見つめ合ったままの瞳から滴が落ちて慎也の腕にこぼれ落ちた。
「僕は、慎也さんが好きだから運命を受け入れたんだよ。好きだから……番になったんだ」
慎也は違ったんだ。定められたから番に選んだってだけで、僕じゃなくても……よかったんだ。
「何を言ってるんだ?」
慎也が首を傾げて背中に回していた腕を弛めて、こぼれた涙を指先で拭った。
「だって、慎也さんは運命だったら誰でもよかったってことなんだろう?」
「そうだ」
強く頷いて、「俺の運命は凛だ」と言って唇に軽い音のする口づけをした。
「もしも、僕じゃなかったら慎也さんはその人を番にした?」
僕が運身の番じゃなかったら、慎也は僕を番に選ばなかった。
「そうだな。お前が運命の番で無かったら俺はずっと番を持たなかっただろう」
『運命の番となら番う』と慎也は本家に言ったと聞いている。性の乱れた徳重家に嫌気がさしているとも。
「慎也さんは僕じゃ無くてもよかったって……こと?」
慎也は「ああ、分かった」と呟いて笑った。
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