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『エピローグ』
ぐったりと身を預けて眠っていた。だから、来客にも気がつかなかった。もちろん慎也も眠っていた。その間に何をされていたかも分からない。
昼前になって目を覚ました慎也に揺り起こされてようやく目を開けたが、発情期のせいなのか、熱っぽくてだるかった。
「腹が減っただろう、飯は用意してやるから待っていろ」
慎也はベッドから立ち上がると、昨晩風呂場から腰に巻いていたバスタオルを床から拾い上げて腰に巻いた。
「ぼ、僕も起きる」
ひとり素っ裸で待たされるのは恥ずかしい。起きあがって、腰の痛みや足の痛みに顔をしかめた。
「甘えていろ」
慎也が同じように床に落ちていたバスタオルを拾って僕に投げた。受けとって頭からかぶると、「……そうする」と小さく答えた。
慎也が寝室のドアを開けると同時に、「おはようございます」と聞き覚えのある声がした。
「お早いお目覚めで何よりです。慎也様」
寝室のドアの向こうで待ちかまえていたのは秘書の穂高だ。慎也を押しのけるようにして寝室に入ってくると、かぶっていたタオルをはぎ取って「ようやく番になられたんですね」と僕の襟足を確認した。恥ずかしさに慌ててタオルを取り返すと再びかぶりなおした。
「慎也様、のんびりしている暇はありませんよ。ようやく手に入れたのですから、これで安心して仕事に打ち込むこともできるでしょう。今日はENU社と午後2時から会議が……」
「今日は休みだ。明日……明後日まで休むからお前が対応しておけ」
「馬鹿なことをおっしゃらないでください。何時間待たされたと思っているんですか?」
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