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『エピローグ』2
腕時計を指さして今の時間を告げる。慎也は面倒くさそうに穂高を押しのけるとタオルの上から僕を抱き締めて、「せっかくの発情期を堪能したい」と言った。
穂高は顔を真っ赤にして、「番になったからには発情期は関係ありません。これまでの分もしっかり仕事をしてください」と大声で告げた。
「お前は番がいないからつまらない」
慎也は言いながらタオルを頭からはがした。項を指先がくすぐる。
「番なんて、面倒で邪魔な存在かとも思っていたが、十分に楽しめるな。ましてや運命だ。やっと手に入れたんだしばらく堪能してもいいだろ?」
慎也が指先でくすぐっていた項に口づける。
怒りに顔を赤くした穂高の握り締められた手が振るえる。
「分かりました。明日、改めてお迎えに上がります。自宅でできる仕事は置いていきますので、よろしくお願いします」
僕を睨みつけながら告げて、「運命の番なんて……私だって、番ってみせます。その時は慎也様にしっかり働いて頂きますので、覚悟しておいてください」と言った。
穂高は大きく足音を立てて寝室を出ていこうとして、ドアの前で止まると振り返って、「報告はさせて頂きましたので、結婚式の段取り等は早急にお願いしますね。報告は慎也様にも送っておきます」と言って意地悪く笑った。
途端にベッドの横の棚の上に置かれた慎也の携帯が鳴り出した。
メールらしいそれを確認して……すぐに携帯が鳴り出す。ひっきりなしに携帯は鳴り続けて、「おいっ、穂高」と声を荒げて寝室を出ていった。
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